本論文は、ポスト・パンデミック時代におけるリーダーシップの在り方について論じている。パンデミック以降、リーダーに求められる能力は「危機管理力」だけでなく、「変化を成長の機会に変換する力」へと進化している。混乱が常態化し、組織運営における不確実性・複雑性が高まる中、リーダーは5つの重要スキルを獲得・発展させる必要があると説く。
もはや「一時的な危機対応能力」では不十分であり、現代のリーダーには「変化を機会と捉える前向きなレジリエンス」「多面的かつ人間中心のマネジメント」「俊敏な実行と学習」を基軸とした包括的なスキルとマインドセットが不可欠である。持続的な成長と組織変革を実現するためには、リーダーシップの根本的な再定義が求められている。
1. 不確実性に積極的に対応する戦略的洞察力
成功するリーダーは、危機の只中にあっても将来への可能性を見出す視点を持つ。ペプシコの例では、サステナビリティと人的資本を中心に据えた事業戦略「pep+」を策定し社会的トレンドを事業のドライバーとして活用している。リーダーは年次サイクル型から機動的かつ洞察主導型の戦略立案への転換を図るべきであり、「もしも」に備えたシナリオプランニングや横断的な学習チームの構築が求められる。
2. 従業員と企業のニーズのバランスを取る柔軟性と構造
従来型の画一的な勤務ポリシーはもはや機能せず、個別性とパフォーマンスを両立させる新たなモデルが必要である。エアビーアンドビーのように、リモートワークと対面の意図的な融合を実現し、明確なマイルストーンによる成果重視型の運用を行うことが有効である。リーダーは柔軟な勤務環境と明確な目標管理を両立させるため、構造化されたフィードバック体制を構築すべきである。
3. 新しいアイデアを迅速に試行・改善する実験的アプローチ
変化が常態化する時代において、実験と迅速な試行錯誤が競争力の源泉となる。スターバックスの「トライアーセンター」は、顧客ニーズや業務改善を目的とした実験・検証の拠点であり、反復を前提とする組織文化を体現している。イノベーションとは計画ではなく実行により生まれるものであり、リーダーは「失敗を学びに変える仕組み」を自らの組織に組み込む必要がある。
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“5 Pandemic-Era Lessons on Leading Through Drastic Change,” HBR.org, March 13, 2025.