この論文は、リーダーが信頼と影響力を高め、組織内外で効果的なネットワークを築くためには、自分自身の「アイデンティティ(自分は何者か)」を深く理解し明確に伝える力が必要であることを論じている。その中核には、「アイデンティティマップ」という手法があり、多面的な自分の側面(価値観、経験、役割など)を視覚化し、自己理解と他者とのつながりを深めるために活用するものである。
論文の主なポイント
アイデンティティがネットワーク構築の基盤となる
- 例として紹介されるのが、クロード・グルニツキー。彼は多様な文化背景を持ち、自己の多面的なアイデンティティを活用して強固なネットワークを構築。
- 多面的なアイデンティティを明確に意識することで、多様な人々との「共通点」を見出し、つながりを強化できる。
リーダーとしての信頼構築にも「自己理解」が不可欠
- 自身のアイデンティティを語ることは、オーセンティシティ(自分らしさ)を示し、周囲からの信頼を得る重要な手段。
- 例:米海軍のマット・フィーリー大佐は、震災対応の危機において、自身の過去の経験や価値観を思い出すことでリーダーシップを発揮した。
「アイデンティティマップ」の重要性
- 筆者が提唱するアイデンティティマップは、自分の持つ多様な側面(家族、職業、趣味、信念など)を洗い出し、視覚化するフレームワーク。
- 自分をより深く理解し、他者との関係性やキャリア選択においても活用可能。
アイデンティティは他者との関係で形成される
- アイデンティティは固定的なものではなく、他者の反応や社会的環境によって変化・影響を受ける。
- 自分で積極的に自己を定義する「セルフ・オーサーシップ(self-authorship)」が、リーダーとしての自信や判断の軸になる。
筆者のメッセージ
- リーダーシップの本質は「自分は何者か」を自分で定義し、他者に伝えること。
- 自己理解とその共有が、信頼・影響力・ウェルビーイングに直結する。
- アイデンティティの探求は、もはや選択肢ではなく、現代のリーダーにとって不可避の課題である。
活用のヒント
- 自分のアイデンティティを棚卸しし、「アイデンティティマップ」を作成してみる。
- 仕事・家庭・趣味・信念など、複数の側面を組み合わせて「自分らしさ」を表現する。
- 他者とつながるとき、共通点を見つける視点として使う。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
高橋由香理/訳
(HBR 2025年3-4月号より、DHBR 2025年7月号より)
Who Are You as a Leader?
(C)2025 Harvard Business School Publishing Corporation.