この論文は、リーダーにとっての「共感力(エンパシー)」の重要性とその適切な使い方について論じている。多くのリーダーが自分の共感力を過大評価しており、実際には部下やチームとの関係を悪化させているというギャップを明らかにしながら、共感をリーダーシップに効果的に取り入れるための6つの実践戦略を提示している。
共感は生まれつきの資質ではなく練習可能なスキル。ただし、「共感」とは感情的になることではなく、「相手の視点を理解し支援姿勢を示すこと」。リーダーがこのバランスを保ちながら実践すれば、信頼関係とチームのパフォーマンスが大きく向上する。
背景と問題提起
- CEOの55%が「共感的リーダー」と自認しているのに対し、部下でそう評価するのはわずか28%。
- 共感が欠如すると職場の士気・エンゲージメントが低下し、離職やバーンアウトのリスクが高まる。
- ただし「共感しすぎ」も弊害があり、感情に巻き込まれすぎるとチーム全体に悪影響を及ぼす。
適切な共感を実践するための6つの戦略
1. 共感に関するプロトコルを明確化する
- 「共感=甘やかし」と誤解されがち。
- 組織内で共感の定義、価値、行動例を明確にする。
- 評価制度とどう結びつくかも示すことで、実践が促される。
2. 自分ではなく他者を中心に据える
- 「聞き役」に徹することが基本。
- 相手の経験に寄り添い、好奇心を持って質問し、自己開示に頼らない。
- 「どう感じましたか」「何が一番困難でしたか」などのオープンな問いが効果的。
3. 個人とチームのバランスを取る
- 感情を共有しすぎて特定の個人に肩入れしない。
- 多様な視点から事実を理解し、チーム全体の利益と両立できる支援策を考える。
4. 肩代わりせず、サポートを促進する
- 「代わりに解決」ではなく、「必要な支援を受ける力を引き出す」。
- 具体的な支援ニーズを本人に問い、共に状況を整理していく。
5. 健全な「線引き」のお手本を示す
- 共感のしすぎは燃え尽きや判断力低下の原因に。
- 自分の限界やニーズ(時間・エネルギー)も尊重し、「線引き」の行動モデルを示す。
- セルフケアやワークライフバランスもリーダーの責任。
6. 言葉の使い方をアップデートする
- 「きっと大丈夫」「少なくとも〇〇だったね」は逆効果。
- 感情を受け止める言葉(例:「それは大変でしたね」)や、話す余地を与える姿勢が信頼につながる。
- どう声をかけてよいかわからない時は、率直にそう伝えるのも共感の一歩。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“Empathy Is a Non-Negotiable Leadership Skill. Here’s How to Practice It,” HBR.org, April 30, 2025.