この論文の要点は、リーダーは統計情報の「分母」に注目しないと意思決定を誤るという警告である。特にパーセンテージや割合は、分母の設定次第で印象や結論が大きく変わるため「分母は何か」という問いが統計に対する最初の防衛線になると説いている。
統計を正しく理解するためには、必ずパーセンテージと絶対数を両方確認する必要がある。「分母は何か?」というシンプルな問いがデータの見えないバイアスやミスリードをあぶり出す。効果や傾向を正しく評価するには、正しい分母を選び、その意味を吟味することが不可欠である。
背景
- 現代のリーダーはデータドリブンな判断を求められるが、実際は部下が加工した統計(解釈)を受け取って意思決定することが多い。
- 統計は生データではなく、その説明にすぎないため、誤解やミスリードが起きやすい。
- 特にパーセンテージは分母次第で印象が変わるため、必ず疑問を投げかける必要がある。
分母の重要性を示す3つのケース
- 変化率と絶対差
- 「売上10万ドル増」と聞いても、前月が20万ドルなら50%増だが、100万ドルなら10%増にすぎない。
- 「市場シェアが3倍になった」場合でも、市場規模が縮小していれば収益は減っている可能性がある。
- 生データとパーセンテージの両方を確認することが重要。
- 偏った分母
- 調査の対象(分母)が特定の集団に偏ると結果が歪む。例:自社便の利用客だけを調査して「他社より好まれている」とする広告。
- 調査の回答率や対象範囲を必ず確認する。
- 条件部分の反転
- 誤った条件付き確率の利用は誤解を招く。例:中程度の飲酒によるがん死亡率を「全がん死亡者に占める割合」で示すのは不適切。本来は「飲酒者におけるがん発症確率」を見るべき。
- マーケティングでも、無料トライアル効果を測る際には「利用者のうち購入に至った割合」が正しい分母となる。
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“One Simple Way to Get Better at Reading Data,” HBR.org, May 23, 2025.