リーダーにとって避けて通れない課題「委譲(Delegation)」を、「タイムログ(時間記録)」というシンプルだが強力なツールを使って実践的に進める方法を解説した論考。タイムログは単なる時間管理ツールではない。それは、リーダーが「自らの時間をどう使うか」を再定義し、組織の生産性と成長を最大化するための戦略的武器である。
問題提起
多くのリーダーは「委譲の必要性」は理解しているが、「どの業務を委譲すべきか」判断できない。
結果として、リスクの低い小さなタスクしか手放さず、貴重な時間を奪う非戦略的業務に追われている。
解決策:タイムログ(Time Log)の活用
タイムログとは、日々の業務を15分単位などで定量的に可視化する手法。
これにより、主観や記憶に頼らず、時間の使い方を客観的に分析できる。
実践の4ステップ
- 記録(Record)
スプレッドシートなどで1日を15分単位に区切り、あらゆる業務・対応を記録。
目的は「評価」ではなく「現状把握」。少なくとも2週間分を継続する。 - 分析(Analyze)
記録データを次の4分類に仕分けする:- 委譲すべきタスク:他人に任せても問題ない。
- 委譲可能なタスク:任せるには教育・引き継ぎが必要。
- 委譲すべきでないタスク:リーダー自身が担うべき中核業務。
- 自動化・削除すべきタスク:やめる・自動化する価値のない業務。
目的は、価値を生まない業務を手放し、戦略的業務へ再配分すること。
- 委譲(Delegate)
委譲先は、部下の強み・関心・成長目標と一致する人を選ぶ。
メモや資料を準備し、期待と目的を明確に伝える。
初期段階では共同で進め、徐々に任せる。
※ミスを恐れて手を出さないことが重要(例:部下に任せた日に休暇を取るCFOティナのエピソード)。 - 振り返り(Reflect)
2か月後に再びタイムログを取り、
- 委譲によって生まれた時間
- 新たに投下できた戦略業務
- ROI(投資対効果:時間単価 × 委譲時間)
を分析する。
事例:CFOマイクのケース
昇進後も前職のタスクを抱えていたマイクは、タイムログを2週間記録した結果、
- 報告書作成
- 照合作業
- 不要な会議
など月20時間分を委譲可能と判明。
以降、チームにもタイムログを導入し、生産性を飛躍的に改善した。
得られる効果
- タスクの本質と価値を客観的に見極められる
- 戦略的・創造的な業務に時間を再配分できる
- 部下の成長と自律性を促す
- 結果として、リーダー自身の影響力と組織全体の成果を高める
“A Data-Based Approach to Delegating,”HBR.org, July 21, 2025.