この論文は、チームに「学習」と「成果」の両方を同時に求めることが、かえってパフォーマンスを低下させるという研究結果をもとに、チームの力を最大化するための目標設定とマネジメントのあり方を示したものである。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」— チームに必要なのは明確な方向性と一貫性である。学習か成果か、どちらかを明確に選び、その軸に沿って行動・評価・報酬を設計すれば、チームは自らの仕事に意義を感じ、協働を深め、優れた結果を生み出す。
1. 学習と成果の両立は集中を奪う
- 企業は「イノベーション(学習)」と「確実な成果(実行)」の両方を求めがちだが、研究ではそれを同時に最大化しようとしたチームが最も低いパフォーマンスを示した。
- 一方、どちらか一方に重点を置いたチームは、自分たちの仕事に意義を感じ、最終的に高い成果を上げた。
2. 二重メッセージの弊害
- 「挑戦と実行の両立を」といったメッセージは、メンバーの優先順位を曖昧にし、迷いや躊躇を生む。
- 評価指標が「信頼性(成果)」と「革新性(学習)」の両方を含むと、メンバーはどちらを優先すべきか分からなくなり、心理的安全や士気が低下する。
3. 明確なパーパス(目的意識)が鍵
- チームが自分たちの「目的」を明確に理解しているほど成果は高くなる。
- 「どちらを優先するのか」を明示することで、チームの活力とエンゲージメントが高まり、結果的にパフォーマンスも向上する。
- 例:顧客対応チームが「迅速対応」と「初回解決」の2つに焦点を絞ったところ、士気・顧客満足・成果すべてが向上。
4. リーダーの実践指針
- 主たる方向性を選ぶ
- 新しい挑戦・成長を重視するなら「学習目標」。
- 正確性・効率を重視するなら「成果目標」。
- 両方を同時に追わないことが重要。
- 行動・評価・報酬を一貫させる
- 学習重視のチームでは「失敗からの学び」や「試行」を称える。
- 成果重視のチームでは「KPI達成」や「精度・一貫性」を評価する。
- 評価基準・インセンティブ・日常の言動を整合させることが不可欠。
- 矛盾するメッセージを避ける
- 「リスクを取れ」と言いつつ失敗を減点するような仕組みは逆効果。
- 言葉と制度の方向性が一致して初めて、チームは安心して集中できる。
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