ビデオゲームは、新しい顧客への入口、圧倒的な体験価値を提供するプラットフォーム、ブランドの未来に直結する戦略領域となった。ペイパル前CEOの言葉のように、「人々は毎日ゲームをするが、決済は週数回しか行わない」──この行動パターンを理解し活用することがあらゆる業界の競争力につながる。
1. モノから体験へ ― 消費者価値観の大転換
消費者は「所有」よりも「体験」を重視するようになっており、ブランドとのエンゲージメントもパーソナライズされた没入体験を求める傾向が強い。その結果、ビデオゲームは新しい顧客接点として急速に重要性を高めている。
2. バーバリー × ビデオゲームの成功
バーバリーはブロックチェーンゲーム「ブランコスブロックパーティー」と連携し、
2021年のサマーコレクションをゲーム内で限定キャラクター「シャーキーB」と仮想アイテムとして販売。
- 限定750体 × 299.99ドル
- 22秒で完売、約22.5万ドルを即時売上
- ハイファッション × デジタル体験の融合
- 新しいデジタル世代へのブランド認知とロイヤルティを強化
バーバリーは金銭的成功だけでなく、新しい市場機会とブランド体験の拡張を実現した。
3. ゲーミング市場の巨大化と普及
- 2024年、33億人がほぼ毎日ゲームをプレイ → インターネット接続人口の約60%
- ゲームは年代・性別・職業問わず浸透
- ソーシャルメディア以上に「没入」「継続」「リアルタイム」という独自価値を提供
ゲーム的要素(ゲーミフィケーション)はすでにInstagram、Duolingo、NYT Games など幅広い領域に組み込まれ、消費者行動に影響している。
4. 主要ブランドが続々参入
- Mastercard × League of Legends(特典付きカード)
- Louis Vuitton(LoL大会トロフィーケース)
- Balenciaga(Fortniteで新作先行発表)
- Peloton(ゲーム化したフィットネス体験)
- 非営利団体がゲーム内アイテム販売で寄付を調達
「遊びは最重要ビジネス領域」になりつつある。
5. ゲーミング戦略がもたらす主な利益
1. 圧倒的な顧客エンゲージメント
ゲーム経由の関与は、Webより高い、オフラインより継続性が強い、購買意欲向上、ブランド記憶の強化に貢献。
2. コミュニティとリアルタイム対話
ゲーム内でブランドが「共に体験する存在」として受け入れられる。
3. オンラインとオフラインの購買連動
ゲーム内でアイテムを買ったユーザーの86%が実物も購入という調査結果。
4. 大規模で価値の高いデータ取得
ユーザー行動データにより、商品開発のリスクやコストを低減できる。
5. 新たな収益源の創出
デジタルアイテムやイベントで大規模なマネタイズが可能。
マイクロソフトがアクティビジョンを687億ドルで買収した理由もこの戦略的価値にある。
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“Your Company Needs a Gaming Strategy,” HBR.org, September 09, 2025.