マグネット効果は、優秀さゆえに生まれる組織課題だが放置するとリーダー本人も組織全体も疲弊していく。優秀なリーダーが燃え尽きずに長く力を発揮するためには、“すべてを引き受けるリーダー”から“全体最適をつくるリーダー”への転換が不可欠である。
1. マグネット効果とは何か
優秀なリーダーほど、上司や周囲から「この人なら確実にやってくれる」と信頼され、次々と仕事が回ってくる。これが筆者のいう “仕事のマグネット効果” である。この現象自体は能力の証でもあるが、仕事の偏りが続くと次のような弊害が発生する。
- 過重労働によるバーンアウト(燃え尽き)
- 戦略的思考の時間が奪われる
- リーダーの本来の役割(方向づけ・意思決定)が損なわれる
- 組織として適切に人材育成・分担ができなくなる
実例として、研究大学のシニアエグゼクティブであるマリアンは、周囲の信頼ゆえに仕事が過度に集中し疲弊していた。
2. マグネット効果が起こる理由
筆者は、多くのリーダーを支援する中で、「個人の強み」 × 「組織の弱点」 の組み合わせが原因であると指摘している。
個人の強み
- 仕事の質が高い:確実に高い成果を出す
- 信頼関係が強い:上司・同僚と密なコミュニケーション
- 献身性が高い:厳しい状況でもやり遂げようとする姿勢
組織側の弱点
- 可視性の欠如:本人の業務量が上司から見えていない
- 委任プロセスの欠如:タスクの割り当て方法が曖昧
- 偏りへの認識不足:仕事が集中している事実に気づいていない
この両方が揃うことで、優秀な人に仕事が偏る状態が固定化してしまう。
3. マグネット効果への具体的対処法
筆者は「我慢して受け入れる」「ただ断る」では根本解決にならないとし、より戦略的に負担を調整する方法を紹介している。
① 優先順位を整理し、主体的に調整する
人員やリソースが限られるほど、仕事の偏りは悪化するため、自分の時間配分を戦略的に管理することが重要。
新しいタスクを依頼されたら:
- それが組織の全体目標に対してどれほど重要かを判断する
- 他の業務との兼ね合いで優先順位を提案する
- こちらから進め方の案を示し、上司の判断を仰ぐ
例:「今週は取締役会資料が最優先のため、財務予測は翌週に対応します。もし順番を変える必要があればご指示ください。」
不満ではなく、冷静に選択肢を示しながらコミュニケーションすることで、負担を自己責任ではなく“業務全体の最適化”として扱える。
② 責任の所在を明確にし、部門横断で協働する
階層が上がるほど仕事は複数の部門にまたがるため、「全部自分がやる」ではなく「適切にリードを設計する」ことが必要。
- 自分の専門外の業務なら適任者を提案する
- 必要に応じて別のシニアリーダーと共同でリードする体制をつくる
- プロジェクト内の役割分担を明確にし、責任の偏りを防ぐ
これは“逃げる”のではなく、プロジェクトを最も効果的に進めるためのリーダーシップの発揮である。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“When You’re the Executive Everyone Relies On – and You’re Burning Out,” HBR.org, October 09, 2025.