不確実性が常態化する現代のビジネス環境では、当初は順調だった変革計画でも、スポンサーの離脱、予算削減、規制変更などにより前提が一気に崩れることが珍しくない。こうした状況で成果を出すリーダーは、初期戦略に固執せず、現実に即して計画を再構築する。本稿は、危機を乗り越えた金融サービス企業のリーダー事例を通じて、成功するリーダーが実践する3つの行動原則を示している。
不確実性の高い時代に生き残るのは、最初の設計を守り抜くリーダーではない。支援の連合を広げ、レジリエンスをシステムとして組み込み、現実に即して期待を再設定できるリーダーである。変化への適応力こそが、信頼と影響力を高め、持続的な成果につながるリーダーシップの本質である。
1. 政治的資本の再構築
単一の強力なスポンサーへの依存は、環境変化に対して脆弱である。成功するリーダーは、スポンサーシップを「ポートフォリオ」として捉え、複数の擁護者による連合を形成する。
- 財務・業務・営業など異なる立場のリーダーを巻き込んだ三角的支援体制の構築
- 定期的な個別ブリーフィングによる可視性と信頼の維持
- 非公式な助言グループ(キッチンキャビネット)による意思決定の質向上
- プレモーテムや障害ログを活用し、組織的な機能不全を「個人の問題」から「共有課題」へ転換
これにより、プロジェクトとリーダー自身の両方の耐久性が高まる。
2. レジリエンスの強化
レジリエンスは精神論ではなく、設計可能な「システム」である。優れたリーダーは、衝撃を前提とした仕組みを組み込み、変化を吸収しながら前進する。
- 現状と変化を整理する「状況の台帳」による再認識
- 「ストップ・スタート・スケール・グリッド」による優先順位の再設計
- 限られた資源を前提にしたリソース再配分とベンダー再交渉
- レジリエンス自己診断の4要素
- 決意(パーパスの明確さ)
- コミュニケーション(優先順位とトレードオフの可視化)
- 敏捷性(前提変化への即応力)
- エンパワーメント(現場への権限委譲)
不確実性を洞察へと変え、再び推進力を生み出すことが目的である。
3. 期待値の再設定
不確実な環境下では、「明確な期待」が信頼とエンゲージメントの基盤となる。期待値の再設定は、基準を下げることではなく、成功の定義を現実に合わせて再合意する行為である。
- 役割・責任・チーム規範・成功指標の再定義
- 意思決定チェックリストを用いたチーム対話の構造化
- 前提条件、選択肢、情報不足、トレードオフを共同で可視化
- 「遅れの言い訳」から「戦略的な取捨選択」への転換
これにより、リーダーはリソースと信頼を守る存在として認識される。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“How to Lead When the Conditions for Success Suddenly Disappear,” HBR.org, October 13, 2025.