AIツールの進化により、採用候補者が面接中にChatGPTなどを利用することは珍しくなくなった。面接官は画面共有を求めるなどして「AIを使っていない証拠」を確認したくなるかもしれないが、それは不信感を生み、優秀な人材を遠ざけるリスクがある。
テクノロジー企業コーダ・サーチ・アンド・スタッフィング(Coda Search & Staffing)のマイク・カイルや、トロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメント(Rotman School of Management)のティジアナ・カシアロ教授は、「探偵のように監視する」のではなく、面接の設計そのものを見直すべきだと提言する。重要なのは、AIが再現できないヒューマンスキルを見抜くことである。
本稿では、そのための5つの観点が示されている。
① 社会的サインを読み、適応できるか(感情的知性)
AIの使用を見破ることよりも重要なのは、候補者が対人関係において適応できるかどうかである。
- 面接官の口調や態度の変化に気づくか
- 軽い反論や雰囲気の変化にどう対応するか
- 雑談を通じて自然なコミュニケーションが取れるか
こうした反応は、自己認識力や他者理解力、すなわち感情的知性を示す。これはチームや顧客と協働するうえで不可欠な能力である。
② 複雑な概念をどう構造化し、論理展開するか(批判的思考)
AIを補助的に使うこと自体は問題ではない。重要なのは、情報をどう統合し、自分の思考として再構築できるかである。
- 正解のない曖昧な問いにどう向き合うか
- 情報を列挙するだけでなく、論理的に結びつけられるか
- 「何を知っているか」より「どう考えるか」を示せるか
記憶力よりも、思考プロセスが評価対象となる。
③ 不足情報を見抜き、質問で前進できるか(好奇心と主体性)
漠然とした問いを投げたとき、
- 情報不足に気づき、追加質問をするか
- 前提条件を確認しようとするか
型どおりの回答ではなく、問いそのものを吟味する姿勢が、批判的思考力と実務力を示す。
④ 予想外の展開への対応力(即興性・適応力)
会話が想定外の方向に進んだとき、
- 冷静さを保てるか
- 準備なしで自分の考えやプロセスを説明できるか
- 未知の領域にどう向き合うか
これは実務における問題解決力を測る重要な指標である。また、AIの利用頻度や用途を率直に尋ねることで、テクノロジーへの理解度や依存度も把握できる。
⑤ 他者と協働し、その場で問題解決できるか(協働力)
対面面接やグループ面接では、
- 他者の意見を聞き、それを発展させられるか
- 控えめなメンバーを巻き込めるか
- 会話を支配せず、多様な視点を統合できるか
といった協働能力が可視化される。技術力だけでなく、複雑な相互作用をマネジメントできる力が重視される。
結論
AIの使用を完全に排除することは現実的ではない。細部を管理しようとするのではなく、面接の設計を進化させることが重要である。
評価すべきは、
- 曖昧さへの対処力
- 思考の深さ
- 適応力
- 協働力
である。
「もしチャットボットがあなたの面接に合格できるなら、それは候補者の問題ではない。それは面接設計の問題だ」という指摘が、本稿の核心である。AI時代の採用とは、AIを排除することではなく、人間らしさをより精緻に見極める営みへの進化なのである。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“Are You Interviewing a Candidate – or Their AI?” HBR.org, November 20, 2025.