Z世代はAIを友人や人生相談相手として利用しているというイメージが広く語られている。しかし、約2500人の米国Z世代(18~28歳)を対象とした大規模調査によれば、実際にはAIを主に「生産性向上ツール」として活用していることが明らかになった。一方で、AIへの依存による知的能力や批判的思考力の低下を強く懸念しており、その関係性は極めて複雑である。本稿は、Z世代のAI利用実態と心理的葛藤を整理し、企業がAI導入を進める際の示唆を提示する。
1. Z世代のAI利用実態
調査によると、Z世代の74%が過去1カ月以内にAIチャットボットを利用していた。
利用目的を見ると、
- 65%:検索エンジン代替
- 52%:仕事の支援
- 46%:文章作成支援
と、生産性向上目的が中心である。一方で、
- 32%:人生相談や人間関係の助言
- 23%:友人代わり
- 10%:恋人代わり
という利用も存在するが、主流ではない。世間では「若者はAIを人生相談相手として使う」と語られがちだが、実態はむしろ「仕事や学習を効率化するためのツール」として利用している。
2. AI利用禁止は現実的ではない
興味深い結果として、
- 16%の若年労働者が
- 「明確に禁止されている職場」で
- AIを業務利用している
ことが判明した。つまり企業が直面している問題は、「AIを使うかどうか」ではなく、「AI利用を隠して使うか、オープンに使うか」である。禁止だけでは利用は止まらず、むしろシャドーAIを生み出すリスクが高いことを示唆している。
3. Z世代が抱く3つの大きな不安
① 学習機会の喪失
68%が、「AIに任せることで自分が学ばなくなる」ことを懸念している。特に、
- 自分で考える機会
- 試行錯誤する機会
- 苦労から学ぶ機会
が失われることを危惧している。AIによる効率化の代償として、長期的なスキル形成が阻害されるのではないかという不安である。
② 批判的思考力の低下
65%が、「AIは深く考える力を弱める」と感じている。AIは答えを即座に提示するため、
- 調査する
- 比較検討する
- 仮説を立てる
- 反証する
といった思考プロセスが短縮される。実際に紹介された研究でも、AI利用者は検索利用者に比べ、
- 調査労力が少ない
- 提案内容が浅い
傾向が確認されている。
③ 人から学ぶ機会の減少
61%が、「AIがメンターや同僚の代わりになることで、人間から学ぶ機会が減る」と懸念している。AIがコーチや相談相手になるほど、
- 上司との対話
- 同僚との議論
- メンターからの指導
が減少する可能性がある。筆者らは、人と人との交流が希薄になった「孤独な共存」の職場を警戒している。
4. AIは本当に人を愚かにするのか
筆者らは「必ずしもそうではない」と結論付けている。AIの使い方によっては、
- 学習速度を高める
- 新しい視点を得る
- 複雑な内容を分解して理解する
- 単純作業を自動化して高度な仕事へ集中する
ことが可能になる。実験では、AIを使って練習したグループは、翌日にAIなしで課題を実施した際、AI未使用グループより高い成果を示した。つまり、AIは「思考の代行者」になると危険だが、「優秀な家庭教師」になると能力向上につながる、ということである。
5. 企業・管理職への示唆
筆者らは企業に対して4つの提言を行っている。
① AIへの不安を否定しない
- 怠惰になる
- 考えなくなる
- 能力が落ちる
という懸念は合理的であり、軽視すべきではない。
② AI利用を禁止しない
利用禁止は現実的ではない。むしろ、
- ガイドライン整備
- 適切な教育
- 利用ルール明確化
による統制の方が有効である。
③ AI体験を増やす
AIを使う頻度が高い人ほど不安は小さい。実際に活用経験を積ませることで、過度な恐怖や誤解を減らせる。
④ 人間能力を高める用途を重視する
AI導入の目的を、
- コスト削減
- 人員削減
ではなく、
- 学習促進
- 能力開発
- 創造的業務への集中
に置くべきである。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“How Gen Z Uses Gen AI—and Why It Worries Them,” HBR.org, January 28, 2026.