リーダーの成長では、強みを伸ばすか、弱点を克服するかを一律に決めるべきではない。重要なのは、現在の役割、保有能力、補完可能性、未開拓の潜在能力を正しく診断することである。その上で、「並外れた能力」「ネックとなる弱み」「未開拓の潜在能力」に焦点を絞る必要がある。
結論として、職務要件やキャリア段階に応じて投資先を変えることが、成長と昇進を加速させる。
1.強みか弱みかを二者択一で考えない
強みをさらに伸ばせば、成果や意欲を高めやすい。一方、重大な弱点を放置すれば、信頼やチームの成果を損ない、キャリアの停滞を招く。重要なのは、どちらが一般的に正しいかではなく、現在の状況で何を優先すべきかを見極めることである。
- 強みが成果を大きく左右するなら、さらに伸ばす
- 弱点が成功を妨げているなら、優先して克服する
- 今後必要となる能力が未開拓なら、意識的に試す
- 他者で補完できる弱点には、過度に時間を使わない
2.自己診断のための4つの問い
① 現在の役割で成功するには何が必要か
まず、職務上求められる能力と最低基準を明確にする。
- 成果を出すために不可欠な能力は何か
- 上司や経営陣は何を重視しているか
- 自分の認識と周囲の期待に差はないか
- 最低基準に達していない領域はどこか
自分が重要だと思う能力と、組織が評価する能力は一致しないことがある。
② 現在の自分にはどのような能力があるか
職務要件に照らし、自身の強みと弱みを客観的に把握する。自分にとって容易なことほど、強みとして認識しにくい。また、役職が上がるほど率直なフィードバックを受けにくくなる。
そのため、次の方法を活用する。
- 上司、同僚、部下から率直な意見を得る
- 360度評価を導入する
- 外部コーチを活用する
- 利害関係のない信頼できる人物に意見を求める
③ 他者や仕組みで補えるものは何か
すべての弱点を自分で克服する必要はない。
- 業務遂行力の不足は、実行力の高い部下で補う
- 専門知識の不足は、採用や外部人材で補う
- 詳細管理が苦手なら、COOや補佐役と連携する
- 関係者調整が苦手なら、チーフ・オブ・スタッフを置く
ただし、信頼構築、意思決定、対人関係など、リーダー本人が担うべき弱点は委任できない。
④ 未開拓の潜在能力はどこにあるか
未開拓の潜在能力とは、不得意分野ではなく、まだ十分に試していない能力である。
たとえば、次のような可能性がある。
- 分析力に優れた人が、ストーリーテリング能力を持っている
- 実行力の高い人が、戦略構想力を発揮できる
- 専門性の高い人が、組織を動かす影響力を持っている
特に、昇進や職務変更の局面では、これまで不要だった能力が重要になる。
3.成長領域を3つに分類する
並外れた能力
他者との差別化につながり、継続的に高い成果を生み出している強みである。
主な特徴は次の通りである。
- 上位水準の成果を継続している
- 具体的な事業成果につながっている
- 他者が容易に模倣できない
- 活用するほど意欲や影響力が高まる
こうした能力は、わずかな追加投資でも大きく伸びる。より重要な場面で、より頻繁に活用すべきである。
ネックとなる弱み
現在または将来の成功を妨げる重大な弱点である。
- チームや周囲に悪影響を与える
- 繰り返し問題として指摘される
- 信頼や心理的安全性を損なう
- 他者や仕組みでは補えない
- 昇進や役割拡大の障害になる
該当する弱みがある場合、強みの強化よりも優先して対処する必要がある。
未開拓の潜在能力
まだ十分に発揮していないが、今後の役割で大きな価値を生む可能性がある能力である。
次のような場合に優先度が高まる。
- 会社の戦略や事業環境が変化している
- 新しい役割への移行を控えている
- 既存の強みと隣接する能力がある
- 現在の強みだけでは次の役割に対応できない
4.優先順位を決める3つの状況要因
職務要件
現在の仕事で卓越した成果を上げるために、何が必要かを基準にする。
- 強みをどこで使えば成果を最大化できるか
- 最低基準を満たしていない能力は何か
- チームの成果を高めるために何を補うべきか
- 短期的に目に見える成果を出すには何が必要か
キャリアステージ
キャリアの段階によって、重視すべき能力は変わる。
- 初期から中期:強みを伸ばし、専門性と実績を築く
- 管理職層:人材育成や組織運営の弱点に対処する
- 経営層:戦略、意思決定、影響力などの不足を補う
- CxO候補:これまで許容された弱点も克服する
上位職になるほど、強みだけでは弱点を相殺できなくなる。
仕事の変化
異動や昇進など、職務移行の段階によっても優先順位は異なる。
- 着任直後:既存の強みを使って信頼と成果を築く
- 適応期:未開拓の能力を試す
- 地位確立後:強みを伸ばしながら重大な弱点を修正する
- 改善要求時:問題となっている弱点に直接対処する
自己開発は、問題が深刻化する前に始める必要がある。
5.実践の進め方
リーダーは、自己開発の対象を広げすぎず、次の順序で取り組むべきである。
- 現在の役割で必要な能力を明確にする
- 自身の強みと弱みを客観的に評価する
- 他者や仕組みで補える領域を除外する
- 並外れた能力、ネックとなる弱み、未開拓の潜在能力を特定する
- 職務要件とキャリア段階に応じて優先順位を決める
- 一定期間ごとに状況を再評価する
成長の鍵は、強みか弱みのどちらかを選ぶことではない。今の自分に最も大きな成果をもたらす領域を診断し、限られた時間とエネルギーを集中させることである。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“Should You Develop Your Leadership Strengths – or Fix Your Weaknesses?” HBR.org, April 15, 2026.