組織に対する脅威には、明確な脅威と曖昧な脅威の2種類がある。曖昧な脅威は一見取るに足らないように見えるが、重大な損失につながるリスクがある。従業員の沈黙やリーダーへの過度な依存を防ぎ、警戒と対話を促す文化と仕組みが組織の強靭性を高める鍵となる。
- 明確な脅威:差し迫っていて、原因も対処法も明白(例:ガス漏れ警報)。
- 曖昧な脅威:兆候が微妙・不確実で、原因や対応が不明瞭(例:かすかな異臭や不調の報告)。
曖昧な脅威は、軽視されたり放置されたりしやすく、見逃すと後に深刻な危機へと発展する可能性がある。
曖昧な脅威が難しい3つの理由
- 複雑で原因が不明確:一時的な異常か重大な問題か判断がつきにくい。
- 予測困難で不確実:影響の大きさや緊急度を見極めるのが難しい。
- 前例がない:過去の対応例が使えず、対処の方針を立てにくい。
明確な脅威 vs 曖昧な脅威の対応の違い
- 明確な脅威には迅速で協力的な対応が可能。
- 曖昧な脅威では、チーム内でも「問題があるか否か」の認識にズレがあり、対応が遅れやすい。
曖昧な脅威に対する「沈黙の文化」
調査と実験により、以下の傾向が確認された:
- 曖昧な兆候が増すと、従業員は発言を控える傾向が強まる。
- 多くの従業員は、問題の判断を上司に委ねる傾向があり、自ら分析や提言を行おうとしない。
- これは、認知的負荷(判断の難しさ)や、伝統的な上下関係の職場文化に起因する。
結果として、従業員が最も関与すべき局面で、組織は逆に脆弱になる。
組織がとるべき対策(3レベルのアプローチ)
- 組織レベル:警戒文化の構築
- 「失敗にこだわる」文化を育て、些細な兆候も分析する習慣をつくる。
- トヨタの「アンドン」システムのように、従業員が自由に警告を出せる仕組みを取り入れる。
- リーダーレベル:観察と調査スキルの訓練
- 従業員にシミュレーションやストレステストを通じて、曖昧な脅威を見抜く訓練を行う。
- 従業員レベル:日常的な警戒と発言の促進
- 状況が完全に明確になる前でも、早期に気づきを共有することが奨励されるべき。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“Why Employees Stay Silent When They See Warning Signs of a Problem,” HBR.org, April 07, 2025.