新興企業などで、経営トップが会議や外部との交流から持ち帰った「新しいアイデア」によって方針が頻繁に変わることで、現場の混乱と疲弊が生じている。このような現象は「戦略疲れ(strategy fatigue)」と呼ばれ、組織のパフォーマンス低下や優秀な人材の流出につながる。
戦略疲れは、リーダーのアイデアや意志の強さそのものよりも、「一貫性」と「冷静な選別」の欠如によって引き起こされる。組織が持続的に成果を出すには、魅力的なアイデアをむやみに追いかけるのではなく、戦略に基づいた意思決定と構造化された実行管理が不可欠である。
戦略疲れの特徴
- 「変革疲れ」が業務プロセスの頻繁な変更によるものなのに対し、「戦略疲れ」は戦略の場当たり的な変更によって生じる。
- 戦略の一貫性がないと、従業員は目的を見失い、自信と集中力を喪失する。
- あらゆる業種・規模の組織に発生しうる。
具体事例
- ハイテクスタートアップ
- CEOが新しいアイデアに飛びつくたびに方向転換。
- 組織内の士気が低下し、混乱が常態化。
- 最終的にCEOもチームも限界に達し、成果を出せず行き詰まり。
- ファッション企業
- 経験不足のCEOが3ヶ月ごとに戦略変更。
- 国際展開、小売強化、ブランド戦略など一貫性なし。
- 優秀な人材が退職し、CEOも後に解任。
戦略疲れへの対処法(4つの戦略)
① 選別基準の明確化
- 新アイデアを実行する前に、自社の戦略に合致しているかを評価。
- Appleのスティーブ・ジョブズは製品を厳選し、集中と革新を実現。
② データに基づくスコアリング手法の活用
- PIO(Netflix)やRICEなどの評価指標で、影響度・労力・優先順位を可視化。
- 限られたリソースを価値の高い施策に集中。
③ 概念実証(PoC)の導入
- 小規模なテストで実現可能性を確認し、大規模展開前に検証。
- 検証して学ぶ文化を醸成し、リスクを低減。
④ 可視化されたパイプライン管理
- 全プロジェクトを一元管理し、重複や衝突を防ぐ。
- 定期的に幹部が見直し、「ワンイン・ワンアウト」の原則を導入する例も。
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