HBR Article:人材採用・育成「給与の透明性を高めると、従業員の満足度は向上する」

 長年、給与の透明化は「従業員の不満を生む」として避けられてきた。しかし、筆者らの研究によると、この通説は必ずしも正しくない。実際には、正確な給与情報の公開が従業員の報酬満足度を高める可能性があることが示された。

給与の透明化は不満を生むどころか、従業員の誤った期待を修正し、公平感と満足度を高める有効な手段となりうる。
経営者は、噂や不正確な情報に依存する環境を放置せず、正しい情報を共有することで「信頼と幸福感」を生む新しい報酬文化を築くべきである。

背景と研究概要

2018年、米証券取引委員会(SEC)は上場企業に対し、CEOの報酬と従業員給与の中央値の比率(ペイ・レシオ)の公開を義務づけた。筆者らはこの前後の期間における1300社・約30万件の従業員満足度データ(グラスドア評価)を分析した。

その結果、ペイ・レシオ開示後、従業員の給与満足度が平均的に上昇していた。これは、従業員が同僚の給与を過大評価しがちであり、実際の中央値を知ることで自分の給与をより現実的に受け止めるようになったためだと考えられる。

主要な発見

  • 従来の懸念(「公開すると不満が増す」)は実証されなかった。
  • 従業員は推測や噂、SNS投稿などから不正確な給与認識を形成していた。
  • 正確な情報開示により、その誤認識が是正され、満足度が上昇した。
  • 特に、これまで給与情報を得にくかった層ほど、透明化の恩恵が大きかった。

企業への示唆

経営者は「給与の秘密主義」を維持するのではなく、従業員がアクセスできる情報環境に合わせて透明性を高める方針を検討すべきである。その際、次の3つの観点が重要となる:

  1. 入手可能な給与情報の精度
     オンライン情報が誇張されている場合、企業が正確な数値を提示することで信頼を得られる。
  2. 従業員の感情や認識の把握
     「自分は低く評価されている」という誤解を正すことが、満足度向上につながる。
  3. 労働市場の競争環境
     情報が限られる環境ほど、正確な給与公開が大きな効果を発揮する。

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