HBR Article:リーダーシップ「優れたリーダーシップを発揮する米陸軍特殊作戦軍の育成法」

 現代の不確実で変化の激しい(VUCA)環境において、企業に最も求められているスキルは「不安定な状況下でのリーダーシップ」である。しかし、従来のエグゼクティブ教育はマネジメントとリーダーシップを混同し、実際のニーズに応えられていない。これに対して、70年以上にわたり有効なリーダー育成を実践してきたのが米国陸軍特殊作戦軍(U.S. Army Special Operations Forces, ARSOF)である。

リーダーは、変化の中で恐怖を抑え、想像力と戦略ビジョンをもって行動する存在である。
陸軍特殊作戦軍のアプローチは、「失敗を学びの源泉に変える」経験学習を通じて、そうした真のリーダーを育成する実証済みの方法であり、ビジネス界でも再現可能なフレームワークとして注目されている。

陸軍特殊作戦軍の育成の特徴

1. 経験学習による「失敗のシミュレーション」

ARSOFのトレーニングは、教室での理論学習ではなく、現実に即したシミュレーションを通じて「失敗から学ぶ」ことを目的とする。兵士たちは、資源喪失や指揮系統の崩壊、想定外の情報流入など、現実さながらの危機状況を体験し、判断力や想像力を鍛えられる。この経験学習が脳の「学習メカニズム」を活性化させ、混乱時にも的確な判断を下す力を養う。

2. リーダーシップの焦点

ARSOFはリーダーシップを「影響力の発揮」ではなく、「新しい状況に新しいプランで臨む能力」と定義している。影響力の行使はマネジメント段階の課題であり、その前に「何を実行すべきか」を定める思考力こそがリーダーの本質だと考える。

リーダーシップが機能しない4つの原因と克服法

ARSOFの分析によると、リーダーシップ不全は以下の4つの要因に分類できる。

  1. 主体的な行動力の欠如
    • 恐怖や混乱により「フリーズ」する状態。
    • 対処法:小さな「手っ取り早いプラン」を即座に立て実行することで、思考と行動を再起動する。
  2. 感情面の自信の欠如
    • 自分の判断への不安や他者依存が強まる。
    • 対処法:過去の成功体験を再確認し、自分を支えるメンターや仲間との信頼関係を構築する。
  3. 想像力の欠如
    • 過去の枠組みにとらわれ、新しい可能性を見出せない。
    • 対処法:異なる立場の視点を取り入れ、シナリオプランニングを行う。
  4. 戦略ビジョンの欠如
    • 行動が断片的で、方向性が示されない。
    • 対処法:目的・優先順位を明確に定義し、長期目標と短期アクションを結びつける。

ビジネスへの応用

オハイオ州立大学の研究チームは、陸軍と共同でこのプログラムを民間向けに応用。医療・製造・ITなど多様な業種で、マネジャーを「不確実性に強いリーダー」へと育成する研修として成果を上げている。

企業もこの「失敗のシミュレーション」手法を取り入れることで、VUCA時代における意思決定力・適応力・主体性を強化できる。これは、従来のマネジメント教育が補えなかった「実践知」を獲得する有効な手段となる。

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