昇進後に成果を出せないリーダーの多くは、前職での成功体験や「自分は実務ができる人」というアイデンティティを手放せず、新旧の役割を併存させてしまう。その結果、戦略的な価値創出に集中できずチームの自律性や信頼を損なう。昇進とは「仕事が増えること」ではなく「影響力の質が変わること」であり、実行者から他者を通じて成果を生み出すリーダーへの意識的な移行が不可欠である。
昇進後の成長は、スキル以上にアイデンティティの移行が鍵となる。過去の成功にしがみつくことは、自身と組織の成長を制限する。
昇進を「新しいリーダーシップへの招待」と捉え、実行から影響力へ、管理から育成へと軸足を移すことで、リーダーとしてのインパクトは飛躍的に高まる。
昇進後の移行を成功させる5つの実践
1. 新しい職務の範囲と期待値を明確にする
昇進理由・責任範囲・期待される価値を上司と明確にすり合わせることが不可欠。「自分が何をするか」だけでなく、「何を手放すか」を理解しないと、マイクロマネジメントや組織の混乱を招く。
2. 明確な「移行日」を設定する
前職からの完全な撤退日を明確に定め、関係者全員に共有する。移行日を曖昧にすると、旧業務への介入が常態化し後任の権限と信頼を損なう。境界線を明確に引くことは冷たさではなく組織への責任である。
3. 新しいリーダーシップ・ナラティブを言語化する
昇進後の役割は「自分が何をするか」ではなく、「どのような価値を組織にもたらすか」で定義される。自分の戦略的役割を言語化し、周囲と共有することで、
- 期待値のズレを防ぐ
- 自分が関与すべき領域/すべきでない領域を明確にする
ことができる。
4. 問い合わせは“答える”のではなく“つなぐ”
自分ならすぐ解決できる問題でも後任や部下に判断を委ねることが重要。問い合わせを適切な人に回す行為は、無責任ではなく、チームを育てる行為である。これを怠ると、部下の成長機会を奪い、優秀な人材の離職につながる。
5. 思考パートナーを持つ
昇進後は、戦術的な正解よりも「戦略的な問い」を扱う時間が増える。信頼できるコーチや人事パートナーなどの思考パートナーは、
- 手放すことへの恐れ
- 無意識に戻る旧習
- 影響力の使い方
を客観的に見直す助けとなる。
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“Don’t Cling to Your Old Job After Being Promoted,” HBR.org, October 29, 2025.