HBR Article:チームマネジメント「プレッシャー下でも機能するチームはどう設計すべきか」

 高い成果が求められる現場では、最新テクノロジーの導入だけでパフォーマンスは改善しない。
重要なのは、誰と誰を組み合わせ、どの程度固定し、どこで人材をローテーションさせるかという「チーム設計」である。
手術室の大規模研究では、メンバー間の協働経験、経験の多様性、チーム構成を意図的に設計することで、効率性と安全性の双方が改善した。

1. パフォーマンスを左右するのは「誰と働くか」である

手術室では、症例の種類や難易度だけでは、時間や成果のばらつきを十分に説明できない。

研究では、

  • 過去に一緒に働いた経験
  • どれだけ多様な相手と協働してきたか
  • チームの構成
  • 経験量

といった人的要因を加えることで、パフォーマンス予測の精度が大きく向上した。つまり、「何をするか」と同じくらい「誰と働くか」が重要である。

2. テクノロジーだけではコーディネーション問題を解決できない

多くの病院では、ダッシュボードや監視システムなどを導入している。

しかし、これらは、

  • どこで遅延が起きたか
  • どこにボトルネックがあるか

を可視化できても、

  • なぜ連携が崩れたのか
  • どうすればチームが円滑に動くのか

までは解決できない。人的コーディネーションの問題には、技術ではなく組織設計による対応が必要である。

3. チームの「親密度」を活かす

過去に何度も一緒に働いたチームは、

  • 相手の動きを予測できる
  • コミュニケーションが速い
  • 突発事象にも対応しやすい
  • 暗黙の連携が機能する

という強みを持つ。特に複雑で予測困難な仕事では、協働経験のあるメンバーを意図的に組み合わせることが有効である。

4. 固定しすぎず、適度にローテーションする

一方、常に同じメンバーだけで働くと、新しい知識や働き方を学ぶ機会が減る。

重要なのは、

  • 中核メンバーには一定の継続性を持たせる
  • 周辺メンバーは適度にローテーションする
  • 異なるチームの知見を広げる

というバランスである。「安定したコア」と「柔軟な周辺部」をつくることで、効率と学習の双方を高められる。

5. チーム構成の多様性も成果に影響する

研究では、ジェンダーバランスの取れたチームほど、

  • 対立が少ない
  • 質問や意見が出やすい
  • 階層を越えたコミュニケーションが増える
  • 問題への対応が速い

傾向が確認された。多様性は単なるコンプライアンスではなく、チームの意思決定と協働を支える設計要素として捉える必要がある。

6. チーム設計だけで効率と安全性を改善できる

病院で実施したパイロットでは、

  • 手術室の回転時間を18分から12分へ短縮
  • 定時開始率を85%から96%へ向上
  • 再入院率を大幅に低減
  • ニアミスを減少

させた。しかも、新しい機器の購入、人員増強、残業増加なしで実現した。変えたのは、「どのように人を組み合わせ、配置するか」である。

7. 導入では透明性と現場参加が重要になる

チーム編成を変更すると、

  • 自律性が失われる
  • シフトの自由度が下がる
  • えこひいきが生じる

といった懸念が生じやすい。

そのため、

  • 配置基準を透明にする
  • 固定化しすぎないルールを設ける
  • 現場から改善案を出せるようにする

ことが必要である。設計の意図とメリットを現場が理解できれば、抵抗は弱まりやすい。

8. 既存データからチーム設計を改善する

新しいシステムを導入しなくても、

  • 人員配置データ
  • プロジェクト履歴
  • 協働履歴
  • 成果データ

を分析すれば、チーム設計の改善余地を見つけられる。まず、協働が固定化しすぎている部分と、逆に断片化しすぎている部分を把握し、そのうえで重要案件には経験あるコアチームを配置し、その他では適切なローテーションを行うことが有効である。

結論

高パフォーマンスを実現するために、企業はテクノロジー投資だけに頼るべきではない。

重要なのは、

  • 協働経験を活かす
  • 固定とローテーションを両立する
  • 多様性を考慮する
  • 配置ルールを透明にする
  • データを使って人員配置を改善する

ことである。優れたチームは偶然できるものではない。人の組み合わせと協働の仕組みを意図的に設計することが、効率性、安全性、実行力を高める強力なレバーとなる。

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