高い成果が求められる現場では、最新テクノロジーの導入だけでパフォーマンスは改善しない。
重要なのは、誰と誰を組み合わせ、どの程度固定し、どこで人材をローテーションさせるかという「チーム設計」である。
手術室の大規模研究では、メンバー間の協働経験、経験の多様性、チーム構成を意図的に設計することで、効率性と安全性の双方が改善した。
1. パフォーマンスを左右するのは「誰と働くか」である
手術室では、症例の種類や難易度だけでは、時間や成果のばらつきを十分に説明できない。
研究では、
- 過去に一緒に働いた経験
- どれだけ多様な相手と協働してきたか
- チームの構成
- 経験量
といった人的要因を加えることで、パフォーマンス予測の精度が大きく向上した。つまり、「何をするか」と同じくらい「誰と働くか」が重要である。
2. テクノロジーだけではコーディネーション問題を解決できない
多くの病院では、ダッシュボードや監視システムなどを導入している。
しかし、これらは、
- どこで遅延が起きたか
- どこにボトルネックがあるか
を可視化できても、
- なぜ連携が崩れたのか
- どうすればチームが円滑に動くのか
までは解決できない。人的コーディネーションの問題には、技術ではなく組織設計による対応が必要である。
3. チームの「親密度」を活かす
過去に何度も一緒に働いたチームは、
- 相手の動きを予測できる
- コミュニケーションが速い
- 突発事象にも対応しやすい
- 暗黙の連携が機能する
という強みを持つ。特に複雑で予測困難な仕事では、協働経験のあるメンバーを意図的に組み合わせることが有効である。
4. 固定しすぎず、適度にローテーションする
一方、常に同じメンバーだけで働くと、新しい知識や働き方を学ぶ機会が減る。
重要なのは、
- 中核メンバーには一定の継続性を持たせる
- 周辺メンバーは適度にローテーションする
- 異なるチームの知見を広げる
というバランスである。「安定したコア」と「柔軟な周辺部」をつくることで、効率と学習の双方を高められる。
5. チーム構成の多様性も成果に影響する
研究では、ジェンダーバランスの取れたチームほど、
- 対立が少ない
- 質問や意見が出やすい
- 階層を越えたコミュニケーションが増える
- 問題への対応が速い
傾向が確認された。多様性は単なるコンプライアンスではなく、チームの意思決定と協働を支える設計要素として捉える必要がある。
6. チーム設計だけで効率と安全性を改善できる
病院で実施したパイロットでは、
- 手術室の回転時間を18分から12分へ短縮
- 定時開始率を85%から96%へ向上
- 再入院率を大幅に低減
- ニアミスを減少
させた。しかも、新しい機器の購入、人員増強、残業増加なしで実現した。変えたのは、「どのように人を組み合わせ、配置するか」である。
7. 導入では透明性と現場参加が重要になる
チーム編成を変更すると、
- 自律性が失われる
- シフトの自由度が下がる
- えこひいきが生じる
といった懸念が生じやすい。
そのため、
- 配置基準を透明にする
- 固定化しすぎないルールを設ける
- 現場から改善案を出せるようにする
ことが必要である。設計の意図とメリットを現場が理解できれば、抵抗は弱まりやすい。
8. 既存データからチーム設計を改善する
新しいシステムを導入しなくても、
- 人員配置データ
- プロジェクト履歴
- 協働履歴
- 成果データ
を分析すれば、チーム設計の改善余地を見つけられる。まず、協働が固定化しすぎている部分と、逆に断片化しすぎている部分を把握し、そのうえで重要案件には経験あるコアチームを配置し、その他では適切なローテーションを行うことが有効である。
結論
高パフォーマンスを実現するために、企業はテクノロジー投資だけに頼るべきではない。
重要なのは、
- 協働経験を活かす
- 固定とローテーションを両立する
- 多様性を考慮する
- 配置ルールを透明にする
- データを使って人員配置を改善する
ことである。優れたチームは偶然できるものではない。人の組み合わせと協働の仕組みを意図的に設計することが、効率性、安全性、実行力を高める強力なレバーとなる。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“What Operating Rooms Can Teach Leaders About Team Design,” HBR.org, May 14, 2026.