HBR Article:コーポレートガバナンス「著しい報酬格差が招く組織の予期せぬリスク」

経営幹部への過剰な報酬や社外ステークホルダーとの待遇格差は、単なる倫理問題にとどまらず、企業の信頼・忠誠・長期的な成功を脅かすリスク要因である。公正でバランスの取れた待遇こそが持続可能な企業経営の基盤となる。

米国では、CEOの報酬が1978年から2021年にかけて1,460%増加し2021年には平均2,780万ドルに。一方、一般労働者の賃金は同期間でわずか18.1%の増加にとどまっている。こうした報酬格差は従業員にとっての不公平感や不信感を生み出し、士気の低下や内部告発のリスクを高める。

研究の目的と方法

  • CEOと従業員間の報酬格差や、社外ステークホルダーとの待遇格差が、従業員の内部告発意欲にどう影響するかを調査。
  • MSCIのKLD指標を用いて企業の外部ステークホルダー対応も評価。
  • アーカイブデータおよび米国の正社員を対象とした2つの実験を実施。

主な発見

  • 報酬格差が大きいほど、従業員の忠誠心は低下し、内部告発意欲が高まる。
  • 社外ステークホルダー(顧客・地域社会など)との待遇差も同様の効果を持つ。
  • 不公平感が忠誠心を損ない、それが通報行動につながる心理的メカニズムが確認された。
  • 労働市場が流動的(転職しやすい)であるほど、内部告発の可能性はさらに高くなる。

提言と示唆

  • CEO・経営幹部:報酬の適正化と、社内外ステークホルダーの待遇バランスに配慮すべき。
  • 取締役会:経営陣に対し、従業員のウェルビーイングを重視した経営を求める責任がある。
  • 政策立案者:過剰報酬を抑えるための税制導入や、従業員待遇改善に対する減税措置などのインセンティブ政策が有効。

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