セレンディピティは、単なる「運」ではなく「偶然に気づき、活かす力」である。企業がこの力を無視すれば大きな機会損失を招く可能性がある。偶発的な発見をイノベーションに変えるには、受容力・越境・実験という3つの要素を企業文化として根付かせることが鍵である。
フェムト秒レーザーによるレーシックの革新
レーシック手術は、角膜を高精度で削るフェムト秒レーザーの導入によって安全性と精度が飛躍的に向上した。この技術革新のきっかけは、偶然の事故から生まれたセレンディピティ(思いがけない幸運)であり、物理学者と眼科医の異分野コラボレーションによって実用化が進んだ。
セレンディピティの3段階プロセス
- 想定外の出来事が起きる
学生が誤ってレーザーを目に浴び、病院で診察を受けた。 - その出来事に価値を見出す人が現れる
眼科医が網膜の精密な火傷から、レーザーの応用可能性に気づいた。 - 機会を活かす
研究チームと企業家が連携し、眼科向けフェムト秒レーザー製品を開発。のちにこの企業は約8億ドルで買収された。
企業がセレンディピティを活かす3つの戦略
- 想定外を受け入れる文化を育む
予期せぬ出来事に注意を払い、価値を見出す姿勢が重要。
例)中国の農家が洗濯機でジャガイモを洗っていたことをきっかけに、ハイアールは野菜洗浄機を開発。 - 異分野の交流を促す
多様な視点の融合が、予期せぬ気づきと連想を生む。
例)物理学者と眼科医の協働、AppleやNVIDIAによる偶発的な出会いを促すオフィス設計。 - 実験を企業文化として重視する
小さな実験から偶然の発見が生まれる土壌をつくる。
例)キヤノンのインクジェット開発も実験中の偶然から誕生した。
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“To Drive Innovation, Create the Conditions for Serendipity,” HBR.org, May 13, 2025.