組織が困難な状況に直面し従業員に悪い知らせを伝えなければならない際、リーダーには感情と理性の両面に配慮した誠実かつ戦略的なコミュニケーションが求められる。本稿では、従業員の不安を軽減し、信頼を築き、士気を保ちつつ組織として前進するためのリーダーシップの実践方法を紹介している。
この論文は、難しい局面こそがリーダーの真価を問われる場であり、共感・透明性・希望の3本柱をもとに信頼と団結を築くリーダーシップのあり方を明快に提示している。
主要ポイント:
1. バランスの取れた情報提供
- リーダーは合理性(事実・背景)と感情(従業員の不安や動揺)の両面に対応する必要がある。
- 現実を隠さず正直に語る一方で、従業員が前向きになれる希望やビジョンを示すことが重要。
2. 共通ビジョンの提示
- 組織の現状・経緯・今後の方向性を明確かつ一貫性あるメッセージとして伝える。
- 目的は共通意識の構築。不確かな噂や誤解を払拭し、行動の指針を与える。
3. 共感と透明性のある語り口
- ストレートで安定感のある話し方に加え、思いやりと誠意をもって話すことで信頼感を醸成。
- 従業員の立場や感情に配慮し、心から寄り添う姿勢が求められる。
4. 希望ある未来の道筋を描く
- 厳しい現実を認めた後は、組織の再起力(レジリエンス)や適応力を強調し、「共に乗り越えられる」メッセージを伝える。
5. 対話と質問の受け入れ
- 一方的な通達ではなく、質疑応答の機会を設けることで従業員の理解を深め、安心感を提供。
- オンライン会議ではチャット機能なども活用し、全員の声を拾う工夫が必要。
6. パーパス(目的)を再確認させる
- ミッションや価値観とつながったエピソードを共有し、従業員が自身の役割や意味を再認識できるよう促す。
- 単なる激励ではなく、現実に根ざした意味のある共感が重要。
7. 会議後のフォローと対話の継続
- 会議直後は予定を入れず、個別の対話に応じる時間を確保する。
- 影響の大きい従業員に個別フォローを行い、公平で包摂的なリーダーシップを実践する。
■ 実践のポイント:
やるべきこと:
- 感情と合理性の両面を丁寧に説明する
- 共通認識と目的意識を育てる
- 明るい未来像を語り、希望を持たせる
避けるべきこと:
- 一方通行の発信で終わらせる
- ネガティブ感情や過度な楽観に偏る
- 会議終了後すぐに立ち去る
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“How to Lead an All-Hands After Delivering Bad News,” HBR.org, May 26, 2025.