過去5年間のコロナ禍と経済的混乱は、企業にとって「正しい顧客」を選定し、その顧客を軸に戦略を構築することの重要性を再認識させた。単なるコスト削減や価格引き上げといった短期的な対策は長期的な企業価値の向上にはつながらず、持続的な成長には顧客との“ウィン・ウィン”の関係構築が不可欠である。
企業が継続的な競争優位を築くためには、まず「正しい顧客」を選び、その顧客を基軸にすべての戦略と実行を再設計することが重要である。これが短期的成果だけでなく将来の成長回復に備える最善の方法であり、「ニュー・ノーマル」における企業の生存と繁栄の鍵となる。
主な論点と構成(4つの柱)
1. 価値をもたらす顧客の選定
- 不確実な時代には短期的視点に陥りやすいが、それでは真の成長は見込めない。
- 売上やコストではなく、価値創出の観点から顧客を見極めることが必要である。
- 選定の鍵は、企業にも顧客にも利益をもたらす関係性にある。
2. 操作的利益成長の限界
- 多くの企業が行ってきたコスト削減や価格引き上げは、TSR(株主総利回り)との相関が薄い。
- 特に2023年以降、インフレ率の鈍化とともに、価格決定力にも陰り。
- 価格やコストだけでは、企業価値を高めることはできない。
3. 収益性の高い成長の実現
- 成功企業に共通するのは、収益性の高い顧客を選び、業務を最適化している点。
- 例:
- ディラーズ百貨店は高級志向顧客に集中し、利益率・TSRを大幅に改善。
- Tモバイルは未開拓・手薄な顧客層に焦点を当て、業界で圧倒的な成長を実現。
4. 顧客起点戦略を支える4つの柱
- 正しい事実に基づく顧客・価値の特定
収益の集中点を特定し、平均値ではなく粒度の細かい意思決定が求められる。 - 適切な戦略の構築
「誰に・どのように・何を」を整合的に設計し、顧客の期待に一貫して応える。 - 適切な資源配分
戦略と一致した形で、資本・時間・人材などを価値ある顧客に集中投下する。 - 実行力のある組織基盤
在庫管理・人材・評価制度なども戦略と整合し、持続可能な組織力を築く。
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