ストレッチアサインメント(挑戦的な業務の割当て)は、スキル向上やキャリア成長を促す手段として多くの企業で活用されているが、スタンフォード大学の研究はこの機会が必ずしも全社員に公平な成果をもたらしていないことを明らかにした。特に、性別や人種・民族による格差が顕在化しており、制度の見直しが求められている。
ストレッチアサインメントは本来キャリア成長を促す強力な手段だが、制度運用が不透明であるがゆえに特定の社員にとっては不利に働いている。企業は、この仕組みを「戦略的人材育成ツール」として再設計し機会と成果の両面での公平性を確保する必要がある。
主な発見と課題
1. 不平等な機会と見返り
- ストレッチ業務は、白人およびアジア系の男性社員においては昇進・昇給などの見返りと強く関連していた。
- 一方、女性や黒人、ラテン系、先住民、太平洋諸島系の社員には、その業務がキャリア成果につながりにくい傾向があった。
- 同じ能力や資格を持っていても、職務評価における信頼度や期待値が異なっている実態がある。
2. 情報格差と透明性の欠如
- 多くの社員が、ストレッチアサインメントの重要性や昇進への影響を理解していなかった。
- 昇進後に初めてその重要性に気づくケースもあり、暗黙のルールが存在している。
3. 「干渉しない信頼」の落とし穴
- 上司による「任せたまま評価しない」姿勢は、特にマイノリティの社員にとっては機会損失となる。
- 評価・アサインメントの非公式性が不平等の温床になっている。
企業に求められる対応
1. 制度の可視化と構造化
- 昇進・評価基準を明文化し、誰にどのような業務が割り当てられているかを追跡・分析できる仕組みを導入する。
- ストレッチアサインメントとキャリア成果との関連を明確に社員に伝える。
2. マネジャーへの支援と教育
- マネジャーに対して、公平なアサインメント配分とキャリア育成の責任を明示する。
- コーチング、評価ツール、ダッシュボードなどの支援策を整備する。
3. 成果の承認と可視化
- ストレッチ業務における成果を組織内で正当に評価し、昇進や昇給に反映する。
- メンター制度やキャリア面談によるフィードバック・支援体制の強化する。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“The Right Way to Implement Stretch Assignments,” HBR.org, May 28, 2025.