本稿は、プロフェッショナルが「エントレインメント(職場の高速リズムへの同調)」により過剰労働へ陥るメカニズムを分析し、その弊害と打破の方法を論じている。
エントレインメントは短期利益をもたらすが長期的には組織を蝕む。リーダーは「高速テンポ依存」から脱却し仕事のリズムを根本的に見直すことで従業員の健康と持続的な成果を両立させる必要がある。
過剰労働に陥るメカニズム
- プロフェッショナルは、組織のテンポに感情的・肉体的に同調し、猛烈なペースを「自ら望むもの」と感じやすい。
- 成果主義的な評価制度、時間記録システム、長時間労働を当然とする文化的期待が、その傾向を強化。
- 速いテンポは短期的には利益を生むが、燃え尽き、創造性の低下、エラー増加、退職者の増加を招く。
- テンポから外れると不安や罪悪感が生じ、「休むこと」自体がストレス源になる。
サイクルが断ち切れない理由
- 締め切りによるアドレナリンや、忙しさによる高揚感への依存。
- 仕事が家庭生活や生物学的リズムを侵食し、強迫的に「常に仕事とつながる状態」に陥る。
- 結果的に「自発的な過剰労働」と見えても、実際は抜け出せない構造。
打破の方法とリーダーの役割
- 時間だけでなくテンポを見直す
- 不要な緊急性を排除し、計画性と振り返りを組み込む。
- 週4日勤務制や非同期型コミュニケーションを導入。
- 例:アトム・バンク(週4日制で士気・収益改善)、ベースキャンプ(非同期化で集中度向上)、メルセデス・ベンツ(休暇中メール削除で安心を確保)。
- 警告サインを察知し修正する
- 見かけ上の高いコミットメントの裏に、強迫的行動やウェルビーイング低下が潜む。
- 定期的なアンケートやAIツールで疲弊・エンゲージメントを可視化。
- 例:バッファー(週4日勤務+エネルギーチェック)、ベアリングポイント(AIでメンタルヘルスモニタリング)。
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