この論文は、中堅企業や中堅規模のプライベートエクイティ(PE)投資会社におけるCEO・幹部採用の難しさと、そのリスク要因を明らかにしている。論文の核心は、「アジリティや自信といった“好ましい資質”も、文脈を誤ればリスクになる」という警鐘と、「中堅企業にふさわしい精緻なリーダー評価プロセスの必要性」を提示している点にある。
1. 中堅企業におけるCEO交代のリスク
- 中堅企業は幹部層が薄く、CEOの資質が企業存続に直結する。
- PE投資先企業では、買収後2年以内にCEOが交代するケースが58%と高頻度。
- しかし、中堅企業や中堅PEは人事リソースや外部支援が不足しており、適切なリーダー選びが難しい。
2. 現在の採用手法の限界
- 人材紹介会社:候補者探索には有効だが、評価を任せると利益相反やサポートの質の低下を招く。
- 心理アセスメント業者:標準化データは提供するが、文脈や企業特性を反映できず、解釈は企業側任せ。
- 結果として、中堅企業は「大企業並みのニーズ」と「小規模企業並みのリソース」というジレンマに直面している。
3. 過大評価されがちな資質とその罠
- アジリティ(敏捷性)
- 変化対応や迅速な決断には有効だが、計画性・一貫性・オペレーション力に欠ける場合が多い。
- 成長初期や統合局面では強みとなるが、安定的成長期には逆効果となりうる。
- 自信
- 決断力や存在感を示す一方で、傲慢さやフィードバック拒否、協働拒否につながりやすい。
- 謙虚さや自己認識が伴わない自信はリスクシグナルである。
4. 求められるアプローチ
- 直観や履歴書、画一的評価に頼るのではなく、企業環境に適したリーダー資質を多角的に検証するプロセスが必要。
- 候補者の「見えないリスク」をあぶり出し、資質のバランスを判断する“解像度の高いレンズ”を持つことが重要。
- 中堅企業やPEは、専門的ツール・プロセス・知見を組み込み、自社に合うリーダーを見極める体制を整えなければならない。
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“How Middle-Market Companies Can Find the Best Leadership Talent,” HBR.org, August 13, 2025.