HBR Article:組織文化/組織開発「AIの導入は組織のサイロ化を加速させる」

 AIは個別の部門効率を高める一方で、部門ごとの「テクノロジー導入」が進むと組織のサイロ化(分断)を加速し、結果的に全社的な成果(例:顧客満足、持続可能性、イノベーション)が達成されなくなる危険がある。

AIは組織変革の触媒になり得るが、無秩序に部門ごとに導入すると既存のサイロを「デジタルで再現」してしまう。対策は技術だけでなく、ガバナンス(CoE)・目的に基づく設計・報酬とKPIの再設計という組織的対応の組み合わせである。実務ではまず「全社の目的(パーパス)」を定め、その目的に沿ったAIプラットフォームと横断KPIを整備することが最短の回避策となる。

問題点(影響)

  1. 「テクノロジー・ファースト」の罠
    • 部門責任者がまずAIを導入し、あとから用途を探すやり方は相互運用性を損ない部門最適に陥らせる。
    • 例:製造の予知保全、サプライチェーンの需要予測、営業の顧客対応、人事のスクリーニングが別々のツールで動き、遅延解消などの横断課題を解決できなかった(エマコムの事例)。
  2. 重複と矛盾
    • 部門ごとに異なるデータセットやモデルを使うことで、矛盾する判断や非効率が生じる。
    • 例:財務のリスクAIは高リスクと判断する顧客層を、マーケティングのAIは主ターゲットと評価し社内衝突を招いた(ウェスタン・パシフィックの事例)。
  3. 企業目標の未達
    • 部門別の改善があっても、部門横断の相乗効果を生まなければ全社KPIは動かない。多くのAIイニシアティブは広がらず終わる(70%が拡張しないという指摘)。
    • 例:小売チェーンで在庫・CS・マーケティングが個別に成果を出してもNPS等は向上しなかった(ベラ・アンド・ワイルドの事例)。

提案する対策(解決策)

  1. ハブ・アンド・スポーク(CoE)モデルの構築
    • 中央のAIセンター(CoE)をハブにしてガバナンス、ベストプラクティス、共有インフラを提供。各部門のAIチームはスポークとしてCoEの基準・資源を使い実行する。
    • 成功例:保険会社がCoEを活用し、営業と引受のAIを統合してリアルタイム承認を実現(バサースト保険の事例)。
  2. 「プロセス」ではなく「パーパス(目的)」から始める
    • 会社全体の最終目標(例:顧客生涯価値の向上)を明確にし、そこから各部門のAI貢献を逆算して設計する。
    • 成功例:共通目的に基づく統一レコメンドで、全社のマーケティング・在庫・物流・CSが連携した(ネクソラ・マーケットの事例)。
  3. 部門横断のコラボレーションを測定・報酬設計に反映する
    • 部門別KPIだけでなく、顧客満足や部門横断プロセス改善などを共通KPIとして設定し、評価・報酬に組み込む。
    • 成功例:農業試験会社が共通の顧客満足・所要時間・データ品質KPIを導入し摩擦を軽減(クロップエッジ・リサーチの事例)。

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