HBR Article:リーダーシップ「リーダーが「ありのままの自分」をさらけ出すと裏目に出る」

 近年、リーダーシップ開発の文脈で「オーセンティシティ(ありのままの自分でいること)」が強く推奨されている。しかし著者トマス・チャモロ=プレミュジックは、この考え方が行き過ぎており、リーダーとしての成果や職場での評価とは必ずしも結びつかないと指摘する。本論文では、「主観的オーセンティシティ」と「他者から見たオーセンティシティ」の違いを軸に、印象マネジメントの重要性を論じている。

1. オーセンティシティの利点は“自分の内側”にある

研究では、自分を“本来の自分らしい”と感じている人ほど、

  • 自尊心が高い
  • ポジティブ感情や活力を持ちやすい
  • 心が落ち着き、フローを体験しやすい

など、心理的ウェルビーイングが向上することが示されている。つまり「自分らしくあること」は、自分自身の心身の健康には良い効果をもたらす。

2. しかし“自分らしさ”は職場評価やリーダーとしての成果と結びつかない

55件の独立研究をまとめたメタ分析では、自己認識としてのオーセンティシティとリーダーシップの発揮・成果・対人スキルとの間に、有意な正の相関が見られなかった。つまり、「私は本来の自分を出せている」と感じていても、そのことが仕事の評価やリーダーとしての成功につながるわけではない。

3. 成果に直結するのは“印象マネジメント”

職場では、状況に応じて振る舞いを調整する、周囲への影響を考えた上で言動を選ぶ、という能力が成功に直結する。さらに興味深いのは、印象マネジメントできている人ほど、周囲から “オーセンティック(本物で信頼できる)” と評価されるという点。

この現象は一見矛盾しているが、実際は以下のように説明できる。

自分を抑え、適切な行動選択をすることで、むしろ「成熟した、誠実な、信頼できる」人物として見える。

これは「主観的な自分らしさ」と「他者からの評価」のギャップを示す典型例である。

4. “自分らしさ”と“他者からの評価”にはトレードオフがある

本文では職場で起きやすい具体的な場面が紹介されている。

例:政治的信念を職場に持ち込む

  • 本人:自分の価値観を語ることで“本来の自分だ”と感じる
  • 同僚:分断を招き、軽率だと受け取る → 信頼が低下

むしろ、意見を控える人のほうが、協調性が高く、成熟した人間として評価される。このように、主観的なオーセンティシティは、周囲の評価としばしば対立する。

5. 結論:リーダーに必要なのは“戦略的な自己調整”

著者の主張は明快である。職場で成功したいなら、
 “ありのままの自分”ではなく、
 “状況に応じて行動を選べる自分”を育てるべき。

  • それは自分を偽ることではなく、
     周囲への責任を果たす、成熟したリーダーとしての行動である。

結果として、そうした行動によってこそ、他者から「本物のリーダーだ」と信頼される。

詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。

関連記事

カテゴリー
アーカイブ