AIへの期待が高まる一方で、45%の企業幹部が「AI導入のROIは期待を下回っている」と感じている。調査の結果、失敗の主因は技術ではなく、人材・プロセス・政治(組織内の権力や利害)という相互に絡み合う組織的要因にあることが明らかになった。
人材面では、①AIの役割が見えない不透明感、②仕事を奪われる不安、③AIを使うことで能力が低く見られるという自己イメージの問題が、現場の抵抗を生んでいる。これに対し、分かりやすいAIガバナンス、利益や成長を共有する仕組み、AI活用を評価・昇進に結びつける制度設計が有効である。
プロセス面では、AIを既存業務に「上乗せ」するだけでは効果は限定的で、個人の仕事(ノード)・部門間の連携(エッジ)・全社的な業務構造(ネットワーク)の3層でワークフローを再設計する必要がある。一部の工程だけを高度化すると、別の工程がボトルネックとなり、全体の成果は伸びない。
政治面では、データやAIを巡る囲い込み、AIによるヒエラルキーの動揺、責任の可視化が新たな対立を生む。これに対しては、データ共有を促すインセンティブ、AIスキルを正当に評価する昇進制度、そしてAIの判断と人間の裁量を適切に組み合わせた責任設計が不可欠である。
事例が示すように、人材・プロセス・政治を同時に変革した企業は、AIを実質的な収益成長と競争優位につなげている。真の課題はAI導入そのものではなく、AIとともに進化できる組織を築けるかどうかにある。AIを単なる技術導入にとどめる企業は、持続的な価値創出には至らない。
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“Overcoming the Organizational Barriers to AI Adoption,” HBR.org, November 11, 2025.