企業が経営的・環境的な制約に直面すると、心理的安全性への投資は「余裕があるときの取り組み」と見なされ、真っ先に削減されがちである。しかし本研究は、心理的安全性こそが危機下において従業員のバーンアウトや離職を防ぐ持続的な資源であることを示している。
エドモンドソンらの研究では、心理的安全性を「社会的資源」と捉え、全米の大規模病院システムにおける約2万7,000人の調査データを分析した。その結果、心理的安全性が高いほどバーンアウトは有意に低く、組織に留まろうとする意向は高まることが確認された。特にパンデミックという極度のストレス環境下では、この保護効果が顕著であった。さらに、危機以前(2019年)に培われていた心理的安全性が、危機後(2021年)の定着意向を高めていた点は、日常的な積み重ねの重要性を示している。
また、医師、女性、有色人種など、歴史的に発言が抑制されやすく、バーンアウト水準が高いグループほど、心理的安全性の恩恵を強く受けていた。これは、心理的安全性が単なる職場風土の問題ではなく、不均衡や脆弱性を補完する機能を持つことを意味する。
結論として、心理的安全性は「余裕があるときの贅沢品」ではなく、混乱や不確実性の中で組織のレジリエンスを支える不可欠なインフラであること、危機が起きてから慌てて導入するのではなく、平時から率直な対話、謙虚さ、質問やフィードバックを歓迎する文化を育むことが従業員の健康と定着、ひいては組織の持続可能性を高める鍵となる、としている。
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“In Tough Times, Psychological Safety Is a Requirement, Not a Luxury,” HBR.org, November 24, 2025.