HBR Article:キャリア「後輩社員のキャリア支援をするリーダー側の男女差とその影響」

 本研究は、これまで後輩社員側のメリットに焦点が当てられてきた「スポンサーシップ」を、支援する側であるリーダーの視点から初めて実証的に分析した。その結果、スポンサーとしての目標設定やネットワーク活用において明確な男女差が存在し、それが心理的負担やキャリア上の利益に影響を与えていることが明らかになった。

1. 男女で異なるスポンサーの目標

  • 男性スポンサーは、スポンサーシップを自身の出世にも資する活動と捉え、比較的単一で自己利益と整合的な目標に集中する傾向がある。
  • 女性スポンサーは、後輩の成長支援を中心に自身の評判維持など複数かつ時に相反する目標を同時に追求する傾向が強い。

その結果、女性のほうが心理的負荷が高くスポンサーシップに伴う「精神的コスト」に男女格差が生じている。

2. ネットワーク戦略の違い

目標の違いは、ネットワーク活用の方法にも表れる。

  • 男性は「疎(まばら)なネットワーク(弱いつながり)」を活用し、遠い知人や異なる集団との接点から新しい情報・機会を得る。この戦略は、後輩に新たなチャンスを提供すると同時に、自身のネットワーク拡張や出世にも寄与する「ウイン・ウイン型」になりやすい。
  • 女性は「密(強い)なネットワーク(強いつながり)」に依拠し、信頼できる関係の中で支援を行う傾向がある。これは実行確率を高める一方で、情報の重複が多く、新たな機会創出や自身のネットワーク拡張にはつながりにくい。

結果として、男性の戦略はスポンサー・後輩双方に利益をもたらしやすいのに対し、女性の戦略は後輩にもスポンサー自身にも相対的に効果が限定的になる可能性が示唆された。

3. なぜ女性の負担が大きいのか

背景には、女性リーダーに対する「育成役割」や「配慮的であるべき」という固定観念がある。
他者のための自己主張は許容されやすいが、自身の利益を前面に出す行動はペナルティを受けやすい。この社会的制約が、女性に複数目標の同時追求という難しい状況を強いている。

4. より良いスポンサーシップへの提案

著者らは、スポンサーシップを「二段階」に分けることを提案する。

  1. まず後輩の目標・優先事項を明確化する(メンター的対話)
  2. 次に、後輩とスポンサー双方に利益が重なる領域を特定する(ウイン・ウイン設計)

これにより、女性スポンサーの心理的負担を軽減しつつ、双方にとって価値あるネットワーク活用が可能になる。

5. 企業への示唆

組織は単にスポンサーシップを奨励するのではなく、

  • メンターシップとスポンサーシップの違いを明確に教育する
  • スポンサー側の心理的コストやリスクを認識する
  • ウイン・ウイン型の機会設計を支援する

といった制度的整備が必要である。無自覚な推奨は、女性リーダーにさらなる負担を課し、不平等を再生産しかねない。


結論

スポンサーシップは本来、後輩とスポンサー双方の成長を促す可能性を持つ。しかし現状では、男性は自己利益と整合的に戦略的活用を進める一方、女性は複数目標の板挟みによる高い心理的負担を抱えている。ゼロサムではなく「上げ潮はすべての船を持ち上げる」という発想のもと、相互利益を設計するスポンサーシップこそが、公平性と成果の両立につながると本研究は結論づけている。

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