多くのシニアリーダーが、長年目指してきた経営ポジションに持続可能性を見出せなくなっている。従来はレジリエンス強化がバーンアウト対策の中心だったが、変化とプレッシャーが常態化した現代では限界がある。本稿では、役割そのものを自分の強み・価値観・エネルギーに合わせて再設計する「パーソナル・リテンションプラン(PRP)」の考え方を提示し、離職や早期引退以外の選択肢を示している。
なぜ多くの経営幹部が離職を考えるのか
現代の経営幹部は、継続的な変革圧力、24時間対応、複雑化する意思決定に晒されている。
その結果、トップポジションを「成功の到達点」ではなく、「持続困難な役割」と感じるケースが増えている。
調査では、多くのCEOや経営幹部がウェルビーイング維持のために退任を検討しており、これは個人の問題ではなく、企業にとっても組織知・戦略継続性・文化安定性を失う重大な経営リスクとなっている。
レジリエンスだけでは限界がある
従来のバーンアウト対策は「もっと強くなる」「耐久力を高める」という発想が中心だった。
しかし、逆境が一時的ではなく常態化した環境では、レジリエンスだけでは持続できない。
必要なのは、無理に耐えることではなく、「役割そのもの」を現実に合わせて再設計する視点である。
PRP(パーソナル・リテンションプラン)の考え方
PRPとは、自分が無理なく成果を出し続けるために、
- 役割
- 人間関係
- 期待値
- 時間配分
- エネルギーの使い方
を見直すための“個人版リテンション戦略”である。
目的は「辞めずに耐えること」ではなく、自分らしい形で長期的に貢献できる状態を作ることにある。
PRP作成の3ステップ
1. 役割の本質を見直す
まず、「本当に求められている仕事」を再定義する。
主な問いは以下である。
- 本当に解決すべき重要課題は何か
- その仕事は誰にとって重要か
- 役割をゼロから設計し直すならどうなるか
- 過剰に背負っている責務は何か
- 不足している支援やリソースは何か
多くのエグゼクティブ職は、旧来型の「長時間労働・英雄型リーダー」を前提に設計されており、現代環境とのミスマッチが起きている。
2. 内面的な棚卸しを行う
次に、自分自身の価値観やエネルギー構造を整理する。
- 自分は何に意味を感じるか
- 何が活力になるか
- 何が消耗要因か
- 自分の“スーパーパワー領域”はどこか
- 現在、その領域にどれだけ時間を使えているか
これにより、「成果は出しているが、なぜ苦しいのか」が明確になる。
3. 次の行動を明文化する
最後に、役割をどう再設計するかを言語化する。
例えば、
- 自分にとって最も重要なこと
- 手放すべきこと
- リセットすべき期待
- 見直すべき人間関係
- これからどんなリーダーでありたいか
を整理する。
重要なのは、大きな転職やキャリアチェンジではなく、「時間の使い方」「役割の定義」「期待値」を少し変えるだけでも、大きな持続可能性向上につながる点である。
事例から見える本質
論文では、
- 「24時間型CMO像」を再定義し、昇進を前向きに捉え直した次世代リーダー
- 自らを“Chief Meaning Officer”と再定義し、人材育成へ軸足を移した幹部
- 即応型マネジメントを減らし、戦略時間を固定化した結果、緊急案件自体が減少した事例
などが紹介されている。
共通しているのは、「仕事を辞めた」のではなく、「仕事との向き合い方を再設計した」という点である。
考察:現代リーダーシップは“耐久戦”から“持続設計”へ
本稿の本質は、現代のリーダーシップが「どれだけ耐えられるか」ではなく、「どう持続可能に設計するか」へ変化している点にある。
特に経営層ほど、
- 責任感
- 周囲への期待
- 成果プレッシャー
- ロールモデルの固定観念
によって、自ら役割を過剰化しやすい。
しかし、本当に重要なのは、
「自分が最も価値を発揮できる領域にエネルギーを集中できているか」である。
PRPは単なるメンタルケアではなく、リーダー自身が役割設計を主体的に取り戻すためのフレームワークと言える。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“What to Do When Your Senior Role Feels Totally Unsustainable,” HBR.org, January 21, 2026.