HBR Article:リーダーシップ「上司や同僚を味方に変えるシニアリーダーは、何をしているのか」

 優れた提案や正論だけでは、シニアリーダー層を動かすことはできない。組織上位層では「何が正しいか」以上に、「誰にどのような影響を与えるか」「誰が支持しているか」「どのような勢いが形成されているか」が意思決定を左右するからだ。本稿では、自己過小評価を捨て、ステークホルダーの関心や不安を把握し、支持者の連合を形成しながら組織的な推進力をつくる重要性を説いている。単なるロジック勝負ではなく、人間関係・価値交換・巻き込みによって意思決定を動かすことが、シニアリーダーに求められる実践的な影響力である。


シニアリーダー層では「正しさ」だけでは動かない

若手時代は、能力や成果を示せば自然と評価や支持を得られた。しかしシニア層では、「有能であること」は前提条件に過ぎない。重要なのは、周囲の優先事項や動機を理解し、組織全体を動かせるかどうかである。

そのため、提案を通すには以下が必要となる。

  • 相手の利害や懸念の理解
  • 関係性を活用した説得
  • 支持者ネットワークの形成
  • 組織内での“空気”や勢いづくり

つまり、シニアリーダーの影響力とは「論理」ではなく、「組織的共感と連携」を構築する力に近い。


多くのリーダーは自分の影響力を過小評価している

研究によれば、多くの人は「相手は自分の要請を断るだろう」と実際以上に思い込んでいる。特にシニア層では、周囲との比較やインポスター症候群によって、自分の影響力を過小評価しやすい。

その結果、

  • 提案を遠慮する
  • 要請を曖昧にする
  • 支援依頼を控える
  • 反対を過度に恐れる

といった行動につながる。

しかし実際には、周囲は想像以上に耳を傾ける準備がある。最大の障壁は外部抵抗ではなく、自身の躊躇であるケースが少なくない。


提案前に「状況マッピング」を行う

シニアリーダーほど、現場や他部門との距離が生まれやすい。周囲は忖度し、本音を言わなくなるため、自分では状況を理解しているつもりでも、実際にはズレが生じている。

そのため重要なのが「状況マッピング」である。

具体的には、

  • 各部門の優先事項
  • 競合するプレッシャー
  • 失いたくないもの
  • 抱えている不安
  • 誰が味方になり得るか

を事前に把握する。

提案前の“偵察活動”が、後の支持形成を大きく左右する。


反対意見は「敵意」ではなく「不安」である

抵抗勢力を単純に「政治的」「保守的」と片付けるのは危険である。多くの場合、反対の背景には以下のような現実的懸念が存在する。

  • 予算減少への恐怖
  • 権限喪失への不安
  • 組織内ポジション低下
  • 業務負荷増大
  • 自部門への悪影響

したがって重要なのは、反対を潰すことではなく、「何を恐れているか」を理解することだ。

その上で、

  • 懸念を認識していると伝える
  • 不利益を最小化する方法を示す
  • 解決策づくりに巻き込む

ことで、抵抗を協力へ転換できる可能性が高まる。


完璧な提案より「共創」が支持を生む

シニア層ほど、完成された提案を持ち込もうとしがちである。しかし、完成度が高すぎる提案は、周囲から見ると「自分たちの入り込む余地がない計画」に映ることがある。

むしろ効果的なのは、

  • 「どうすれば成功できると思うか」
  • 「どんなリスクがあるか」
  • 「どのように改善できるか」

を問いかけ、相手を設計側へ巻き込むことである。

人は、自分が関与した案には当事者意識を持つ。支持形成とは、説得よりも“共同所有化”に近い。


支持者の連合を形成し、組織的勢いを作る

提案を通すには、単独で戦わないことが重要である。

まずは、

  • 最も恩恵を受ける人
  • 優先順位が近い人
  • 影響力を持つ協力者

から支持を固める。

その際、メールだけで済ませず、可能な限り対面や会話で依頼することが効果的である。声・表情・熱量は、支持形成に大きく影響する。

そして最終的には、意思決定者が複数のルートから同じ支持メッセージを聞く状態をつくる。

これは単なる根回しではなく、「組織的な必然性」を形成するプロセスである。


最終提案では「簡潔さ」と「明確な要請」が重要

最終意思決定者は、多忙かつ意思決定疲れの状態にある。したがって、提案は以下が重要となる。

  • 一目で理解できること
  • 初期成功事例があること
  • 懸念把握済みであること
  • 支持者が存在すること
  • 組織目標との整合が明確であること

さらに重要なのは、「何を決めてほしいのか」を明確に伝えることである。

多くの提案は、最後の要請部分で萎縮し、曖昧になる。シニア層ほど、遠回しな表現ではなく、必要な決断をストレートに示すことが求められる。


本稿の示唆

シニアリーダーに必要なのは、「正しいことを言う力」ではなく、「組織を動かす力」である。

その本質は、

  • 相手の利害理解
  • 不安への共感
  • 巻き込みによる当事者化
  • 支持者ネットワーク形成
  • 組織的勢いの演出

にある。

つまり、上位層におけるリーダーシップとは、“論理の競争”ではなく、“共感と連携の設計”なのである。

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