Cスイートを目指す人材に求められる水準は、これまで以上に高まっている。専門領域で成果を上げるだけでは不十分であり、全社視点、協働力、影響力、人材育成力、適応力が必要である。S&P500企業の分析からも、Cスイートへの道は社内昇進が中心である一方、外部登用では同職経験が強く重視されることがわかる。
1. 最も一般的な道は「社内昇進」である
S&P500企業のCスイートでは、約6割が社内昇進である。特にCEOやCOOでは社内登用が多く、CFOやCMOもその傾向が強い。社内昇進者は平均勤続年数も長く、企業文化、事業構造、人材、意思決定の癖を深く理解している。つまり、Cスイート候補には専門能力だけでなく、「組織全体を理解していること」が大きな強みになる。
2. 外部登用では「同じ役職の経験」が重視される
社外からCスイートへ採用される場合、過去に同じ役職を経験していることが強く評価される。特にCFOやCLOでは、その傾向が顕著である。一方で、業界経験の重要度は役職によって異なる。CEOやCOOでは業界知識が重視されやすいが、CHROやCIOでは異業界からの登用も多い。つまり、外部市場では「何を知っているか」だけでなく、「その役割を実際に担った経験」が大きな信用になる。
3. CEO交代はCスイート再編の機会になる
CEOが交代すると、経営チームの構成も大きく変わる。特に就任後1年以内は、CFO、CHRO、CMOなど主要ポジションの入れ替えが起こりやすい。そのためCスイートのキャリア機会は、個人の実績だけでなく、
- CEO交代
- 事業再編
- 戦略転換
- 組織構造変更
といった経営イベントにも左右される。キャリア形成では、こうした組織変化を捉える視点も重要である。
4. Cスイートでは「全社への影響力」が問われる
Cレベルに到達すると、自分の専門部門だけを率いればよいわけではない。求められるのは、
- 他部門と協働する
- サイロを越えて意思決定する
- 全社戦略を実行へつなぐ
- 経営チームとして成果を出す
ことである。CHROが「人事の人」、CIOが「ITの人」、CFOが「会計の人」に留まれば、Cスイートでは価値が限定される。専門家から「企業全体を動かす経営者」へ視座を変える必要がある。
5. 人を率い、自らを変え続ける力が必要である
Cスイートで成果を上げるには、強いチームをつくり、自分がすべてを抱え込まないことも重要である。そのためには、
- 適材適所の配置
- 権限委譲
- 人材育成
- 戦略と仕事の意味づけ
- 継続的な自己評価
- フィードバックの受容
が必要になる。さらに、ジョブローテーション、損益責任、部門横断プロジェクトなどを通じて、専門領域以外の経験を意図的に積むことも重要である。
結論
Cスイートへの道は、専門性を深めるだけでは開けない。重要なのは、
- 自社と事業全体を理解する
- 他部門へ影響を与える
- 人を育て、任せる
- 全社視点で判断する
- 自分自身を継続的に変える
- 不確実な環境でも学び続ける
ことである。Cスイート候補に求められるのは、「優れた部門責任者」であることではない。専門性を土台に、組織全体を動かし、他者とともに成果を生み出せる「経営者」へ進化できるかどうかである。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“How People Actually Get to the C-Suite in S&P 500 Companies,” HBR.org, May 22, 2026.