この論文は、「実力主義(メリトクラシー)」と「インクルージョン(包摂性)」は対立する概念ではなく、むしろ両立すべきものであるという立場から、公正な社会や組織の実現に向けた課題と提言を述べたものである。
実力主義を本当に機能させるためには、インクルージョンを排除してはならない。むしろ、インクルージョンこそが実力を正しく評価できる土台であり、制度的障壁を取り除いた環境こそが、公正な評価と成功の実現を可能にする。
1. 実力主義とインクルージョンは共通して「公正さ」を目指す
- 筆者は「実力」を重視するからこそ、「インクルージョン」も推進している。
- 両者は一見矛盾して見えるが、どちらも恣意的な判断や不公平を排し、努力と能力に基づいて評価される社会を目指している。
2. 現実には「実力」を正しく評価できていない
- 優秀なスキルや才能を持ちながらも、形式的・バイアスのある採用プロセス(例:面接重視)により機会を奪われる事例(自閉症のブライアン、障害を負ったUXデザイナーのケイトリン、高年齢のデータアナリストのソフィア)を紹介。
- 面接や昇進判断は、しばしば本質的な能力よりも社会的偏見に左右されがち。
3. 誤った実力主義信仰のリスク
- 「実力主義」は元来、英国の社会学者マイケル・ヤングによる風刺的なディストピア描写であったが、理想として誤解されて広まった。
- 実際には、社会的・経済的資源の偏在により出発点が大きく異なり、公平な競争にはなっていない。
4. 誤った二項対立の害
- 実力とインクルージョンを対立概念と捉えると、制度的なバイアスや排除を正当化してしまう。
- 「インクルージョン=基準の引き下げ」と誤解されると、真に能力ある人々が支援を受けられず組織も競争力を失う。
5. 公正な実力主義にはインクルージョンが不可欠
- 真の実力主義は、全ての人が等しく競争できる機会があってこそ成立する。
- したがって、不公正な制度やバイアスを取り除き、誰もが能力を発揮できる環境=インクルーシブな制度設計が必要。
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“The False Dichotomy of Merit and Inclusion,” HBR.org, February 24, 2025.