職場には明文化されたルールのほかに、日々のふるまいの中で自然に共有される「規範」が存在する。これは、組織文化の基盤となるものであり、公正な職場づくりには、この規範を意図的に形成・変革する必要がある。そこで注目されるのが、「規範起業家(Norm Entrepreneur)」という概念である。
組織の不確実性が高まる現代、職場で明確な「規範」があることは安心感を生む。そして、誰もが「規範起業家」として行動すれば、公正で活気ある職場文化が育まれる。小さな行動からでも意識的に「何が普通であるべきか」を形づくっていくことが、持続可能で健全な組織への第一歩となる。
規範の力とリーダーの役割
- 職場では、公式ルールよりも非公式な「規範」の方が従業員の行動に強く影響する。
- 規範とは「この職場ではこうするのが普通」とされる行動や考え方であり、曖昧なまま放置すれば不公正が固定化される恐れがある。
- リーダーは、規範を意図的に形づくる「規範起業家」として公正な行動を示し、職場文化をポジティブに変革することが求められる。
公平な職場をつくるための3つのアプローチ
1. 誤った認識を正す
- 人々は周囲の意見や行動を過小評価し、社会規範を誤って理解しやすい(例:育休を取りにくいという思い込み)。
- 事実に基づく情報を共有したり模範行動を示したりすることで、「それが普通だ」と認識させ、行動を後押しできる。
2. 適切な規範起業家を選ぶ
- 誰でも規範起業家になれるが、影響力のある人や「意外な人物」が担うと説得力が増す。
- たとえば、白人男性が多様性を訴えたり男性が積極的に育休を取ったりすると、ステレオタイプを崩し変化を促しやすい。
3. 集団の力を活かす
- 規範は一人では変えられない。チームで協力して取り組むことで浸透しやすくなる。
- 小さな実験から始め、周囲に影響を与える「規範の推進役(Norm Champion)」を立てて輪を広げていく。
- BBCの「50:50プロジェクト」などの事例は、草の根的な広がりの力を示している。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“To Make Your Workplace Fairer, Take Charge of Its Norms,” HBR.org, May 02, 2025.