米国では南北戦争時代からジェンダーによる賃金格差が存在し、現在も女性は男性の約83%の賃金しか得ていない。女性従業員を増やせば格差が自然に解消すると考えられがちだが、実際には複雑な要因が絡んでいる。
ジェンダー賃金格差解消の道のりは当初の想定より長く、組織は「達成した」と思い込むのが早すぎる。持続的な改革努力を続けることで、均等賃金という目標に近づくことができる。
研究概要
- カナダの労働市場データ(1997~2018年、40職種)を分析。
- 「ジェンダー賃金格差」を、女性正社員の賃金中央値 ÷ 男性正社員の賃金中央値 で定義。
主な発見
- ティッピングポイントの存在
- 女性比率が14%以下のとき、女性比率の上昇とともに賃金格差は急速に縮小。
- しかし14%を超えると、格差縮小のペースは鈍化。
- 例:女性比率が少ない時は1%の上昇で大きく格差が縮小するが、一定水準を超えると3.6%増やさなければ同等の効果が得られない。
- 初期進展の理由
- 少数派女性は「トークン(形だけの存在)」として注目され、社会的・法的圧力が働くため組織は公平性改善に取り組む。
- しかし女性比率が上がると「問題は解決した」との錯覚(=頂上の錯覚)が生じ、改革努力が弱まる。
- 長期的な傾向
- 2002年までにほぼ全職種で格差縮小が進み、その後も継続。
- 2018年までに40職種中36職種で賃金格差は縮小。
- 女性比率が増えた職種では、格差縮小幅(10.6%ポイント)が、減った職種(5.6%ポイント)の約2倍。
含意
- 女性比率の上昇だけでは不十分。
- 真の解決には、
- 女性比率増加
- 同一労働・同一賃金の徹底
- 初期改善後も取り組みを緩めない持続的努力
が不可欠。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“Research: The Gender Wage Gap Tipping Point,” HBR.org, July 10, 2025.