多くの企業では、戦略計画と予算の間に大きな乖離が存在する。両者は本来連動すべきだが、互換性のない枠組みで構築されているために、意思疎通が取れず実行力が低下している。戦略は市場や価値提案などを軸に設計される一方、予算は財務的な収入・支出の枠組みで組まれるため言語が異なっているのだ。この問題を解決するため、筆者は「主要なステークホルダー」を共通軸として戦略と予算を再構築する4つのステップを提案している。
戦略と予算をステークホルダーを軸に統合することで、従来の「戦略は理想論、予算は現実論」という分断を解消できる。
この新たな枠組みは、戦略を実行可能にし、予算に意味を与え、経営陣の議論を建設的かつ協調的にする。
結果として、戦略は「絵に描いた餅」ではなく、実際の意思決定を導く「生きたプロセス」となる。
ステップ1:戦略の再構築
まず、戦略を「やることリスト」ではなく、企業が依存する主要なステークホルダー(顧客、従業員、サプライヤー、株主、地域社会など)を中心に組み直す。
各ステークホルダーから「何を得たいか」「彼らは何を求めているか」を明確にし、それを定量化することで、財務パフォーマンスに直結する戦略基盤を築く。
ステップ2:運営予算の点検
予算の各費用項目(例:労務費、広告費、光熱費など)を精査し、それがどのステークホルダーと関係しているかを明らかにする。
これにより、予算が実はステークホルダーとの関係を反映していることを可視化できる。
ステップ3:予算をステークホルダー軸で再分類
従来の「勘定科目別」ではなく、ステークホルダーごとに収益・支出を再分類する。
例えば、顧客別収益、従業員関連支出、サプライヤー関連支出といった形に整理する。
分類が難しい項目は細分化して議論することで、支出構造の明確化にもつながる。
ステップ4:戦略計画と予算の統合
同じステークホルダー体系を共有することで、戦略的意思決定の財務的影響を評価できるようになる。
たとえば、価格引き下げ戦略が顧客収益や最終利益にどのように影響するかを定量的に把握できる。
これにより、戦略チームと財務チーム、人事などの他部門が共通言語で議論できるようになり、経営全体の一体感が高まる。
詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。
“How to Sync Your Budget with a Strategic Plan,” HBR.org, August 18, 2025.