多くの企業がコスト削減や意思決定のスピード向上のために組織をフラット化し中間管理層を削減している。その結果、上級リーダーが突然“巨大化したチーム”を任されるケースが増えている。筆者らはこの過負荷状態を 「リーダーシップ・アバランシュ(雪崩)」 と呼び、燃え尽きずにチームを機能させるには従来のやり方をそのまま拡大するのではなく、明確で意図的な戦略が不可欠であると指摘する。
そこで提示されるのが、チーム規模拡大に対応するための 下記5つの実証済み戦略 である。
急拡大したチームのリーダーシップは、「仕事量を増やすこと」ではなく、リーダーとしての在り方と仕組みを意図的に再設計すること で成立する。完璧を求める必要はないが、5つの戦略を活用してリーダーシップをリセットすれば、雪崩のような負荷に押し潰されるのではなく、チームが再び強固な基盤を築き前進できる。
1. 「これまでのやり方」をチームでリセットする
- 小規模チームで機能した習慣(毎週の1on1、常時対応、全意思決定への関与)は、大規模チームでは破綻する。
- リーダーとチームが一緒に 役割・期待・意思決定方法・会議のやり方 を再定義する。
- チーム規範は 5〜7項目に絞り、定期的に見直すことで摩擦を減らし、心理的安全性を高める。
2. 優先順位づけを厳格化し、その基準を可視化する
- リーダーの主要な役割は 戦略的トリアージ(選別)。
- “すべてやる”姿勢はバーンアウトを招くため、重要度の高いものだけに集中し、他は任せるか捨てる。
- 「トップ5」メッセージのように 優先事項をチーム全体に徹底的に共有 することで、迷いを減らし、エスカレーションも減少する。
3. 権限委譲を段階的に深め、影響力を増幅させる
- スケールしたチームを動かすには、“全部自分で”ではなく、部下を通じて成果を出す構造 が必須。
- 任せられるチームリーダーやキーパーソンに、意思決定やエスカレーション権限を付与する。
- 指示 → 判断 の関係から、判断 → 重要時のみ共有 に転換し、自律的な行動を促す。
4. システム・プロセスを簡素化してスピードを回復する
- チーム拡大とともに、プロセス・会議・ツールが重複し、生産性を阻害する。
- 役に立たない会議や冗長なフローを洗い出し、ボトルネックを徹底的に排除 する。
- 小さな改善でも、意思決定のスピード向上や実務時間の増加につながる。
5. エネルギー管理とレジリエンスをリーダー自身が体現する
- リーダーの疲弊はチーム全体に伝播する。
- 自分の状態(赤・黄・青)を定期的にチェックし、持続可能なペースを確保する。
- 回復の時間を“甘え”ではなくリーダーシップの一部と捉え、境界設定や会議ブロックなどで意図的にエネルギーを守る。
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“When You’re Suddenly Managing More People – and Feeling Buried,” HBR.org, September 01, 2025.