ハーバード・ビジネス・スクールが350名の経営幹部に対して実施した調査により、企業が採用面接で最も警戒する「6つの危険信号(レッドフラッグ)」が体系化された。これらはいずれも、採用ミスマッチを引き起こし、組織に混乱・低業績・離職コストをもたらす強い要因となる。
同時に、候補者・採用側の双方が重視すべき姿勢としてClarity(明確性)/Courtesy(礼節)/Coherence(一貫性)という「3つのC」が提示されている。
以下、6つすべてのカテゴリーについて、
①問題の特徴(なぜ危険なのか)
②候補者が取るべき行動
③採用チームが取るべき行動
の3点セットで整理した。
この論文が示している本質は次の3点に集約される:
6つのレッドフラッグは“性格的欠陥”ではなく、行動・準備・コミュニケーションによって改善可能な領域である。
候補者と企業は「明確性・礼節・一貫性」の3つを基盤に、適切な情報交換と判断を行う必要がある。
採用の成功は“相互理解の深さ”を高めるプロセスの設計にかかっている
① 自己認識の不足(Self-awareness gap)
■ 特徴・危険性
- 自分の強み・弱みを語れない
- 実績を客観的に説明できない
- ステータス自慢に走る
- 将来のキャリア像が曖昧
- チーム貢献より自己PRに偏る
→ 自己理解と職務適合の判断が不十分な候補者と見なされる
■ 候補者の対策
- スキルを細かく棚卸しし、強み/弱み/成長余地を整理する
- スキルが発揮される/されにくい具体的な状況を把握する
- 実例(エピソード)を使って意思決定や行動を説明する
- チームやメンターの貢献を適切に評価する
- 失敗経験を率直に語り、学びを明示する
- 「自信 × 謙虚さ」をバランスよく表現する
■ 採用側の対策
- 面接偏重を避け、スキルテスト等も活用
- 構造化面接を導入し、予測精度を高める
- 面接官に“深掘り質問”のトレーニングを行う
- 面接を実務に近いシチュエーションに寄せて適性を判断する
② 準備不足(Lack of preparation)
■ 特徴・危険性
- 企業の基本情報を知らない
- ビジネスモデル・製品・競合理解が浅い
- 応募ポジションの役割を把握していない
→ 入社後のミスマッチや早期離職につながる強い警告サイン
■ 候補者の対策
- 企業の歴史、製品、顧客層、競合環境を調べる
- 応募職種のミッション・業務範囲を深く理解する
- 自分の経験がどう貢献できるかを具体的に整理する
- 面接官への質問を事前に準備する
- 企業文化と自分の働き方の相性を検討する
■ 採用側の対策
- 面接前に「学ぶべき情報」を候補者に共有する
- 必要な知識を具体的に説明し、ミスマッチを防ぐ
- 企業理解を評価する質問を用意する
- 面接官自身も企業・部門の説明を統一して伝える
③ マナー・プロフェッショナリズムの欠如(Lack of courtesy & professionalism)
■ 特徴・危険性
- 礼儀のない言動
- 遅刻、レスポンスの遅延
- 適切でない服装
- 一方的なコミュニケーション
→ 入社後の協働に問題が生じる可能性が高い
■ 候補者の対策
- 基本的なビジネスマナー(挨拶・メール・時間厳守)を徹底する
- 状況に応じた服装や言葉遣いを選ぶ
- 面接官への敬意を示す
- 可能であれば会話の要点を簡潔・丁寧にまとめる
- 面接後に丁寧なフォローアップ(メール等)を送る
■ 採用側の対策
- 面接官自身も一貫したプロフェッショナリズムを保つ
- 基準を明確にし、マナー不足が“単なる緊張”ではないかを判断する
- 文化・価値観とのフィットも含め総合的に評価する
④ 自己利益の過度な追求(Excessive self-interest)
■ 特徴・危険性
- 報酬・肩書・福利厚生ばかりを強調
- 「自分が得られるもの」を最優先
- 組織貢献の視点が欠ける
→ チーム志向が低く、利己的な行動に走りやすい
■ 候補者の対策
- 条件面の質問はタイミングを見て行う
- まず“自分が価値提供できる点”を明確化して伝える
- 組織への貢献や協働姿勢を強調する
- 報酬だけでなく役割・学び・ミッションへの共感を示す
■ 採用側の対策
- 候補者が何に動機づけられているかを深掘りする
- 条件面の質問が過度に執拗でないか観察する
- 組織の提供価値(キャリア成長・文化など)を正確に説明し、誤解を減らす
⑤ 過去・現在の雇用主との問題ある関係(Problematic employer relations)
■ 特徴・危険性
- 前職の悪口や不満を強調
- 上司・同僚との摩擦を相手のせいにする
- 離職理由が曖昧、ポジティブに語れない
→ 対人関係能力・責任感に疑問が生じる
■ 候補者の対策
- 離職理由は「前向きな成長理由」で語る
- 不満が理由の場合も、事実と改善学習に焦点を当てる
- トラブル経験は客観的に整理し、学びや改善点を提示する
- 他者非難より、自身の対応・教訓にフォーカスする
■ 採用側の対策
- 離職理由や対人関係の経緯を丁寧に検証
- 候補者の語り口が一方的・感情的でないかを確認
- 過去の対立経験をどう処理したか、行動の具体性を見る
⑥ ジョブホッピング(Frequent job changes)
■ 特徴・危険性
- 短期転職の繰り返し
- キャリアの一貫性が見えない
- 忍耐力・関係構築力の不足が疑われる
→ 採用後すぐに離職するリスクを企業が懸念する
■ 候補者の対策
- 転職の理由を「一貫したキャリア軸」として説明する
- それぞれの職場での成果・学びを具体的に示す
- 短期離職でも納得できる背景(プロジェクト完了等)を明示する
- 今回の応募が長期的なキャリアにどうつながるか説明する
■ 採用側の対策
- 転職理由の整合性を確認し、背景を丁寧に聴き取る
- 短期離職が“環境要因”か“本人要因”かを慎重に判断する
- 求める役割が長期関与を必須とする場合はその点を明確化する
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“6 Red Flags That Keep Good Candidates from Getting Hired,” HBR.org, October 03, 2025.