HBR Article:リーダーシップ「自信に満ちた人材がトップに昇進した時の落とし穴」

「優秀な専門家として成功した人ほど、CEOや経営幹部になると、その成功パターンが組織を弱くすることがある」

経営トップに求められるのは、自分が最も賢い人間であることではなく、組織全体から最良の知恵を引き出すことです。そのためには、専門家としての自我を手放し、不確実性を認め、部下の主体性を高めるリーダーシップへの転換が必要になる。


論文の要点

1. 昇進後に陥る「3つの落とし穴」

① 専門家であり続けようとする

多くの経営幹部は、

  • 財務
  • 営業
  • IT
  • 法務
  • エンジニアリング

などの専門領域で成果を上げて昇進してくる。しかしCEOになると、「自分で答えを出す人」から「答えを出せる人材を育てる人」へ変わらなければならない。

ところが、

  • 部下の仕事に介入する
  • 意思決定を覆す
  • 自分でやり直す

を繰り返すと、

  • 部下が成長しない
  • 当事者意識が失われる
  • 有能人材が離職する

という悪循環が発生する。

回避策

  • 指示より質問
  • 管理より支援
  • 成果より人材育成

に軸足を移す。評価基準を「自分が何を成し遂げたか」から「部下がどれだけ成長したか」へ変える。


② 揺るぎない自信を見せ続ける

若手時代は

  • 自信
  • 決断力
  • 即答力

が評価される。しかし経営トップになると「何でも分かっているふり」は逆効果になる。

理由は、

  • 現実を見ていないように映る
  • 異論が上がらなくなる
  • 悪いニュースが隠される

からである。結果として、経営陣はトップを避けて情報共有を始める。これは組織にとって極めて危険な状態である。


回避策

重要なのは「無知を認める勇気」である。

ただし、❌「分かりません」ではなく、⭕「これは非常に複雑な問題であり、まだ判断材料が不足している」という形で語る。

つまり、自分の能力不足ではなく、状況の複雑さとして不確実性を説明する。すると

  • 信頼
  • 透明性
  • 心理的安全性

が高まる。


③ 価値を付加しすぎる

経営幹部ほど、「もっと良くできる」と思ってしまう。部下が良い提案を持ってきても、「素晴らしい」で終わらず、

  • 修正する
  • 改善する
  • 付け加える

をやってしまう。


マーシャル・ゴールドスミスの言葉を借りれば、

アイデアの質は5%向上するかもしれないが、当事者意識は50%低下する

ということである。提案は改善されても、それはもう部下のアイデアではなく、「上司のアイデア」となる。すると、

  • 実行力
  • 熱意
  • オーナーシップ

が失われる。


回避策

  • 最後に話す
  • 先に聞く
  • 指示より質問

を徹底する。トップの役割は、アイデアを出すことではなく、良いアイデアが生まれる場を作ることである。


本稿の核心

優秀な人材ほど、

  • 専門性
  • 自信
  • 問題解決能力

によって出世する。しかしトップになると、その強みがそのまま弱みに変わる。

昇進前昇進後
自分が解決する組織が解決できるようにする
答えを出す良い問いを出す
専門家になる専門家を育てる
正解を示す思考を引き出す
自分が成果を出す組織が成果を出す

つまり、リーダーシップとは「自分が優秀であること」を証明する仕事ではなく、「周囲を優秀にする仕事」である。

詳細は下記参照。定期購読登録が必要です。

関連記事

カテゴリー
アーカイブ