HBR Article:リーダーシップ「リーダーは強みを伸ばすべきか、弱点を克服すべきか」

 リーダーの成長では、強みを伸ばすか、弱点を克服するかを一律に決めるべきではない。重要なのは、現在の役割、保有能力、補完可能性、未開拓の潜在能力を正しく診断することである。その上で、「並外れた能力」「ネックとなる弱み」「未開拓の潜在能力」に焦点を絞る必要がある。
結論として、職務要件やキャリア段階に応じて投資先を変えることが、成長と昇進を加速させる。

1.強みか弱みかを二者択一で考えない

強みをさらに伸ばせば、成果や意欲を高めやすい。一方、重大な弱点を放置すれば、信頼やチームの成果を損ない、キャリアの停滞を招く。重要なのは、どちらが一般的に正しいかではなく、現在の状況で何を優先すべきかを見極めることである。

  • 強みが成果を大きく左右するなら、さらに伸ばす
  • 弱点が成功を妨げているなら、優先して克服する
  • 今後必要となる能力が未開拓なら、意識的に試す
  • 他者で補完できる弱点には、過度に時間を使わない

2.自己診断のための4つの問い

① 現在の役割で成功するには何が必要か

まず、職務上求められる能力と最低基準を明確にする。

  • 成果を出すために不可欠な能力は何か
  • 上司や経営陣は何を重視しているか
  • 自分の認識と周囲の期待に差はないか
  • 最低基準に達していない領域はどこか

自分が重要だと思う能力と、組織が評価する能力は一致しないことがある。

② 現在の自分にはどのような能力があるか

職務要件に照らし、自身の強みと弱みを客観的に把握する。自分にとって容易なことほど、強みとして認識しにくい。また、役職が上がるほど率直なフィードバックを受けにくくなる。

そのため、次の方法を活用する。

  • 上司、同僚、部下から率直な意見を得る
  • 360度評価を導入する
  • 外部コーチを活用する
  • 利害関係のない信頼できる人物に意見を求める

③ 他者や仕組みで補えるものは何か

すべての弱点を自分で克服する必要はない。

  • 業務遂行力の不足は、実行力の高い部下で補う
  • 専門知識の不足は、採用や外部人材で補う
  • 詳細管理が苦手なら、COOや補佐役と連携する
  • 関係者調整が苦手なら、チーフ・オブ・スタッフを置く

ただし、信頼構築、意思決定、対人関係など、リーダー本人が担うべき弱点は委任できない。

④ 未開拓の潜在能力はどこにあるか

未開拓の潜在能力とは、不得意分野ではなく、まだ十分に試していない能力である。

たとえば、次のような可能性がある。

  • 分析力に優れた人が、ストーリーテリング能力を持っている
  • 実行力の高い人が、戦略構想力を発揮できる
  • 専門性の高い人が、組織を動かす影響力を持っている

特に、昇進や職務変更の局面では、これまで不要だった能力が重要になる。

3.成長領域を3つに分類する

並外れた能力

他者との差別化につながり、継続的に高い成果を生み出している強みである。

主な特徴は次の通りである。

  • 上位水準の成果を継続している
  • 具体的な事業成果につながっている
  • 他者が容易に模倣できない
  • 活用するほど意欲や影響力が高まる

こうした能力は、わずかな追加投資でも大きく伸びる。より重要な場面で、より頻繁に活用すべきである。

ネックとなる弱み

現在または将来の成功を妨げる重大な弱点である。

  • チームや周囲に悪影響を与える
  • 繰り返し問題として指摘される
  • 信頼や心理的安全性を損なう
  • 他者や仕組みでは補えない
  • 昇進や役割拡大の障害になる

該当する弱みがある場合、強みの強化よりも優先して対処する必要がある。

未開拓の潜在能力

まだ十分に発揮していないが、今後の役割で大きな価値を生む可能性がある能力である。

次のような場合に優先度が高まる。

  • 会社の戦略や事業環境が変化している
  • 新しい役割への移行を控えている
  • 既存の強みと隣接する能力がある
  • 現在の強みだけでは次の役割に対応できない

4.優先順位を決める3つの状況要因

職務要件

現在の仕事で卓越した成果を上げるために、何が必要かを基準にする。

  • 強みをどこで使えば成果を最大化できるか
  • 最低基準を満たしていない能力は何か
  • チームの成果を高めるために何を補うべきか
  • 短期的に目に見える成果を出すには何が必要か

キャリアステージ

キャリアの段階によって、重視すべき能力は変わる。

  • 初期から中期:強みを伸ばし、専門性と実績を築く
  • 管理職層:人材育成や組織運営の弱点に対処する
  • 経営層:戦略、意思決定、影響力などの不足を補う
  • CxO候補:これまで許容された弱点も克服する

上位職になるほど、強みだけでは弱点を相殺できなくなる。

仕事の変化

異動や昇進など、職務移行の段階によっても優先順位は異なる。

  • 着任直後:既存の強みを使って信頼と成果を築く
  • 適応期:未開拓の能力を試す
  • 地位確立後:強みを伸ばしながら重大な弱点を修正する
  • 改善要求時:問題となっている弱点に直接対処する

自己開発は、問題が深刻化する前に始める必要がある。

5.実践の進め方

リーダーは、自己開発の対象を広げすぎず、次の順序で取り組むべきである。

  1. 現在の役割で必要な能力を明確にする
  2. 自身の強みと弱みを客観的に評価する
  3. 他者や仕組みで補える領域を除外する
  4. 並外れた能力、ネックとなる弱み、未開拓の潜在能力を特定する
  5. 職務要件とキャリア段階に応じて優先順位を決める
  6. 一定期間ごとに状況を再評価する

成長の鍵は、強みか弱みのどちらかを選ぶことではない。今の自分に最も大きな成果をもたらす領域を診断し、限られた時間とエネルギーを集中させることである。

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