長年の努力によって成功を収めたリーダーでも、かつて自分を動かしていた野心に疲れ、仕事への活力を失うことがある。
重要なのは、意欲低下を能力不足と捉えず、体力、価値観、成功基準、役割の変化を見極めることである。休息や仕事の再設計で回復できる場合もあれば、新たなキャリアへ移行すべき場合もある。
結論として、過去の成功モデルに固執せず、現在の自分にとっての意義とエネルギーを基準に働き方を再構築すべきである。
1.成功を支えた働き方が重荷に変わる
キャリア初期には、長時間労働や困難な仕事への挑戦が、評価や昇進につながる。しかし、同じ働き方を続けると、次第に負担へと変わる。
- 成果を出しても満足できない
- 周囲の期待に応え続けることに疲れる
- 高い基準を下げられない
- 仕事への誇りより消耗感が上回る
- 成功しているにもかかわらず空虚さを覚える
これは能力や意欲を失ったのではない。本人の状態や価値観が変わり、従来の働き方が合わなくなった可能性がある。
2.エンジンの問題か、燃料の問題か
最初に、エネルギー低下の原因を二つに分けて考える。
エンジンの問題
仕事への関心は残っているが、身体や精神の回復力が低下している状態である。
- 疲労が抜けにくい
- 睡眠不足の影響が大きい
- 長時間労働を続けられない
- 集中力を維持しにくい
- 休息や健康管理が不足している
この場合は、休養、業務量、生活習慣、仕事との境界線を見直す必要がある。
燃料の問題
体力はあるが、従来の目標や報酬が自分を動かさなくなった状態である。
- 昇進に魅力を感じない
- 評価や報酬が意欲につながらない
- 仕事の意味を感じられない
- 以前の目標を追う理由がわからない
この場合は、休むだけでは解決しない。仕事の意味やキャリアの方向性を再定義する必要がある。
3.成果ではなく、重要な仕事をしているか
人が仕事を捉える視点は、主に三つに分かれる。
- 生活の糧:収入を得るための仕事
- キャリア:昇進や評価を得るための仕事
- 天職:仕事そのものに意義や充実を感じる仕事
昇進や実績を原動力にしてきた人は、キャリアが頭打ちになると、目標を失いやすい。そこで、次の点を問い直す必要がある。
- この仕事自体に意味を感じているか
- 誰や何に貢献したいのか
- 昇進がなくても続けたい仕事か
- 成果を出す過程に喜びがあるか
野心を捨てる必要はない。肩書や昇進ではなく、意義ある仕事や社会への影響へ向け直すのである。
4.誰の基準で成功を判断しているか
長年働くうちに、会社、業界、上司、顧客の期待を、自分自身の成功基準として取り込むことがある。
- 常に高い成果を出さなければならない
- 誰よりも多く働くべきである
- 失敗してはならない
- 昇進し続けなければならない
- 周囲の依頼を断ってはいけない
外部評価に自己価値を結びつけると、慢性的な不安と過剰な努力を招く。重要なのは、卓越性と完璧さを区別することである。高い成果を目指すことと、すべてを完璧に行うことは同じではない。キャリアの後半では、次のように成功を再定義する必要がある。
- どのような働き方を誇りに思えるか
- 何に時間を使いたいか
- どの程度の成果で十分か
- 仕事以外に何を守りたいか
5.最もエネルギーが高まる仕事は何か
仕事には、自分を消耗させる業務と、活力を与える業務がある。たとえば、次のような活動である。
- 若手の育成やメンタリング
- 顧客との対話
- 戦略や構想の策定
- 難しい課題への助言
- 新規事業や組織の立ち上げ
- 専門知識の共有
- 社会的意義のある活動
日々の業務を、次のように分類するとよい。
- 活力を与える仕事
- 負担はあるが必要な仕事
- 継続的に消耗させる仕事
- 他者へ委任できる仕事
- やめても支障のない仕事
自分が最も価値を発揮し、充実感を得られる仕事へ時間を再配分することが重要である。
6.ジョブ・クラフティングで役割を再設計する
ジョブ・クラフティングとは、現在の仕事を、自分の強み、関心、価値観に合う形へ組み替えることである。
実践例
- 実務の一部を部下へ委任する
- メンタリングや助言業務を増やす
- 不要な会議や社内調整を減らす
- 戦略立案や顧客対応へ集中する
- 得意分野のプロジェクトを選ぶ
- 自分が担わなくてよい役割から手を引く
リーダー層には、本人が考えている以上に、役割を再設計する裁量がある場合が多い。優れた成果を長く維持するには、時間だけでなく、エネルギーの配分も戦略的に管理しなければならない。
7.現在の仕事に残る理由は十分か
仕事を再設計した後に、残った業務だけでも現在の役割を続けたいと思えるかを確認する。
継続できる可能性が高い状態
- 休息を取れば意欲が回復する
- 境界線を設ければ負担を減らせる
- 役割変更によって意義ある仕事を増やせる
- 組織内で別の役割へ移行できる
キャリア転換を検討すべき状態
- 活力を感じる仕事がごく一部しかない
- 役割を再設計する余地がない
- 組織と自分の価値観が合わない
- 休んでも仕事への関心が戻らない
- 残る理由が報酬や地位だけである
現在の職を離れることは、専門性を捨てることではない。
8.経験を生かす次のキャリア
これまで培った経験は、別の形でも活用できる。
- コンサルティング
- アドバイザリー
- 社外取締役
- 教育や研修
- メンタリング
- 非営利活動
- フラクショナルワーク
- 後進育成を中心とする役割
キャリア後半では、自ら成果を出すことに加え、他者や組織の成長に経験を還元することが、新たな意義となり得る。
9.キャリアを見直す5つの問い
- これはエンジンの問題か、燃料の問題か
休息が必要なのか、仕事の意味を見直すべきなのかを判断する。 - 新たな成果を追っているのか、重要な仕事をしているのか
昇進や評価ではなく、仕事そのものの意義を確認する。 - 誰の基準に従って生きているのか
外部の期待ではなく、自分にとっての成功を定義する。 - どの仕事で最もエネルギーが高まるのか
その活動を中心に現在の役割を再設計する。 - その仕事だけを残しても、現在の役割を続けたいか
答えが否であれば、次のキャリアを検討する。
かつて成功をもたらした野心や働き方が、いつまでも最適とは限らない。リーダーに必要なのは、過去の自分を再現し続けることではなく、現在の自分にとって何が重要かを見極め、成功の定義と働き方を更新することである。
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“When Your Ambition Starts to Exhaust You,” HBR.org, April 16, 2026.