企業や組織は、投資委員会やR&D審査など重要な意思決定を委員会に委ねている。委員会の目的は多様な専門知を集めることだが、実際には情報共有の失敗が頻発している。原因は、未共有の情報を出す際にかかる 認知的コスト(思い出す負担)、心理的コスト(評価懸念)、社会的コスト(同調圧力)にある。その結果、専門家の知見が十分に活かされず重大な誤判断(例:チャレンジャー事故、ピッグス湾事件)につながってきた。
完璧な集団意思決定は保証できないが、率直さ・好奇心・批判的挑戦を促す仕組みを設計することで集合知を最大限に引き出し、質の高い意思決定を実現できる。
FDAの事例と発見
- 米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会で、2007年に投票手順が変更された。
- 以前:順番に口頭で投票(他者の影響を受けやすい)。
- 変更後:全員が同時に匿名投票し、その後に内容が開示される方式。
- この小さな変更によって以下の効果が確認された:
- 全会一致の割合が45%→27%に減少(群衆行動の抑制)。
- 議論がより多様かつ深くなり、未共有情報や異議が表面化。
- 発言時間が均等化し、互いに質問し合う行動が増加。
- 結果として、承認勧告の質が向上し、市販後のリスク(黒枠警告・承認撤回)が有意に減少。
得られた示唆
- 成果だけでなくプロセス設計に注目すべき
- メンバー構成よりも、情報共有を促す手順や動機づけが重要。
- 心理的安全性と発言の均衡を確保する
- リーダーは参加パターンを監視し、異論や新しい情報を積極的に評価する必要がある。
- 議論を意図的に構造化し、同時投票を導入する
- 投票前に多様な見解を引き出し、同時投票で群衆効果を防ぐ。
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“Set Your Committees Up for Success,” HBR.org, June 28, 2025.