イノベーションは、単に協働や情報共有を増やせば生まれるものではない。有効なマネジメントは、問題解決の相互依存性と目標の共有度によって異なる。集合体は「収束型」「発散型」「関心型」の3つに分類でき、それぞれ緊密な協働、緩やかな連携、独立した競争が適している。
結論として、リーダーは一律にコラボレーションを強化するのではなく、課題の性質に合った集合体を設計すべきである。
1.協働を増やせばよいとは限らない
294件の実証研究を分析した結果、人々の結びつきとイノベーション成果には一貫した関係がなかった。
- 緊密な協働が成果を高める場合がある
- 協働が成果に影響しない場合もある
- 過度な情報共有や調整が成果を低下させる場合もある
- 中程度の連携が最も有効なケースもある
重要なのは、協働の量ではなく、取り組む課題と集合体の構造が適合しているかである。
2.集合体を分類する2つの軸
イノベーションを担う集合体は、次の2つの観点から分類できる。
問題解決の相互依存性
- メンバーが互いの知識や成果を組み合わせる必要があるか
- それぞれが独立して解決策を探せるか
目標の共有度
- 全員が共通の成果を目指しているか
- 各自が異なる目的や利益を追求しているか
この組み合わせによって、集合体は3つの類型に分かれる。
3.収束型:専門知識を統合する
収束型は、問題解決の相互依存性が高く、目標も共有されている集合体である。
適する状況
- 複数分野の知識を統合する必要がある
- メンバーの判断が互いに影響する
- 一つのソリューションを共同で構築する
- 部門横断型の製品開発や研究開発を行う
フォードとGEヘルスケアによる人工呼吸器開発や、ディープマインドによる「アルファ・フォールド」の開発が該当する。
マネジメントの要点
- 異なる専門分野や思考スタイルを持つ人材を集める
- リアルタイムで情報と仮説を共有する
- 心理的安全性と信頼を構築する
- 課題に応じて意思決定者を交代させる
- 個人ではなくチーム単位の成果を評価する
多様な人材を集めるだけでは不十分である。異なる知識を統合する仕組みが必要である。
4.発散型:独自の探索とネットワークを両立する
発散型は、問題解決に一定の相互依存性がある一方、メンバーの目標は異なる集合体である。各チームは独自の目的を追求しながら、共通のインフラや知識から恩恵を受ける。
適する状況
- 解決への道筋が明確でない
- 複数の実験を同時並行で進める必要がある
- 新興技術や業界全体の変革に取り組む
- 企業や部署を越えたエコシステムを活用する
J&Jの「JLABSネットワーク」が典型である。参加企業は独自の事業を追求しながら、設備、投資家、知識を共有している。
マネジメントの要点
- 重複した知識ではなく、新しい視点を持つパートナーを選ぶ
- ネットワークを無秩序に拡大させない
- 情報量と調整コストを管理する
- 外部知識を理解し、活用する吸収能力を高める
- 各チームの独立性を保ちながら、必要な接点を設ける
接続先を増やしすぎると、情報過多と意思決定の遅延を招く。広さよりも、関係の質と補完性が重要である。
5.関心型:独立した多数のアイデアを競わせる
関心型は、共通の目標を持つ一方、メンバーが独立して問題解決に取り組む集合体である。最良の成果は、協働による統合ではなく、多数の異なる案から優れたものを選ぶことで得られる。
適する状況
- 問題が明確に定義されている
- 複数の解決方法が考えられる
- 多様で独創的な案を広く集めたい
- 社外や異分野の人材を活用したい
NASAの太陽粒子現象予測や、メタによるディープフェイク検知コンテストが該当する。
マネジメントの要点
- 幅広い分野から参加者を集める
- 必要な背景知識とデータを提供する
- 初期段階では他者のアイデアを見せすぎない
- 各参加者の独立した思考を守る
- 内発的動機と金銭的報酬を組み合わせる
- 複数の受賞機会や段階的報酬を設ける
- 改善につながる具体的なフィードバックを行う
他者のアイデアを早く共有しすぎると、発想が既存案に引き寄せられ、独創性が失われる。
6.3つの集合体では正しい施策が異なる
同じ施策でも、集合体の種類によって効果は逆になる。
情報共有
- 収束型:全面的な共有が必要
- 発散型:必要な情報だけを選択的に共有する
- 関心型:初期段階の共有を抑え、独立性を守る
調整
- 収束型:緊密な調整が必要
- 発散型:緩やかな調整が適する
- 関心型:調整を最小限に抑える
意思決定
- 収束型:共同で統合し、一つの案をつくる
- 発散型:各チームが独自に判断する
- 関心型:独立案を集め、後から選抜する
インセンティブ
- 収束型:チーム全体の成果を評価する
- 発散型:各主体の成果とネットワークへの貢献を評価する
- 関心型:複数の賞や継続的な報酬機会を提供する
7.リーダーが確認すべき問い
イノベーションの体制を構築する際には、次の点を確認する必要がある。
- 一つの解決策を共同でつくる必要があるか
- 個々のメンバーは独立して探索できるか
- 全員が同じ目標を持っているか
- 異なる目的を持つ主体の知識を活用したいのか
- 情報共有は発想を広げるのか、固定化させるのか
- 必要なのは統合、ネットワーク、競争のどれか
- 誰を参加させ、どの程度つなぐべきか
イノベーションを生むのは、協働そのものではない。課題の性質に合わせて、協働、独立、競争のバランスを意図的に設計することである。
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“When Silos Hinder Innovation – and When They Can Help,” HBR.org, April 03, 2026.