HBR Article:ワークライフバランス「勤務時間外に仕事をしない優秀な従業員に不利な評価をしていないか」

 真に持続可能で成果主義な組織をつくるには、「スイッチを切れる力」を持つ社員をむしろ称賛する文化が必要である。ウェルビーイングを重視するのであれば、制度、評価、昇進基準にもそれを反映させるべきである。優れた社員とは「燃え尽きるまで働く人」ではなく、「オフを使ってコンディションを整え、長く高い成果を出せる人」である。

背景と問題意識

  • 企業はバーンアウト対策として、ワークライフバランスやウェルネスプログラムを推進。
  • しかし現実には、私生活を守ろうとする従業員が昇進などで不利な扱いを受けていることが、16の調査・実験により判明。
  • 表向きは休息を推奨しつつ、実際には「常につながっている社員」を評価するという矛盾した文化が存在。

主な研究結果(16の調査、7,800人対象)

  • 仕事時間外に自動返信を設定して業務から切り離された社員は、実際のパフォーマンスが高くても「昇進にふさわしくない」と評価される傾向。
  • これは、理由が家族の看病であっても、直属の部下であっても、常に同様の評価が下される。
  • 「ワークライフバランスを重視する」と公言する管理職でさえ、無意識にデタッチメントをネガティブに評価していた。

原因:努力や忠誠心の“見える化”偏重

  • 経営層や管理職は、「深夜でも連絡が取れる」「休日も対応する」といった“姿勢”を献身性の証と見なすバイアスを持っている。
  • こうした考えは、実際の業績よりも、常時稼働している印象を重視してしまいがち。
  • 結果として、自己犠牲型の働き方が評価される不健全な文化を固定化してしまう。

負の連鎖とリスク

  • ワークライフバランスを実践しようとする人ほど評価されにくくなり、結局は誰もオフにできなくなる。
  • 組織内に「燃え尽きることで昇進が決まる」ような風潮が生まれ、バーンアウト、離職率、医療費、業績低下などの悪循環に。

解決策:リーダー・組織ができる5つの行動

  1. 「誰を評価しているか」を見直す
    • 実際の成果ではなく、「いつでも対応できる人」に偏った評価をしていないかを確認。
  2. コミットメントの再定義
    • 「常にそこにいる」ではなく、「質の高い成果を出すこと」をコミットメントとする。
  3. 勤務時間を尊重するルール化
    • 管理職が勤務時間外に連絡を取ることを制限。
    • 残業には正当な補償や代休を。
  4. デタッチメントを支援する制度
    • たとえば「週末はメール送信を控える方針」など、正式なガイドラインを明文化する。
  5. 管理職の無意識バイアス教育
    • デタッチメントに対する偏見を自覚させ、評価や採用時の判断基準を見直す。

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