HBR Article:人材採用・育成「意欲の高い従業員のやる気を削ぐマネジャーの行動」

「意欲が高く、エンゲージメントの高い社員ほど、善意のマネジャーによって余計な仕事を押し付けられ、その結果として満足度・生産性・定着率が下がっている」。マネジャーは無意識に「この人ならやってくれる」「この人なら潰れない」と考え、追加業務を優秀な人材へ集中させる。しかし研究結果は、その判断が組織にとって逆効果であることを示している。


研究で明らかになったこと

4300人以上を対象とした調査の結果、

  • エンゲージメントが高い社員
  • 内発的動機(仕事そのものに喜びを感じる社員)

に対して、追加業務が著しく偏っていた。ある調査では、追加業務の69%が意欲の高い社員に集中 していた。

さらに実験では、74%の確率で意欲の高い社員が追加業務担当に選ばれる ことも確認されています。


マネジャーが陥る2つの誤解

① やる気が高い人は何でも喜んでやる

これは誤りである。人が好きなのは「仕事全般」ではなく「特定の仕事」である。

例えば、

  • 顧客提案
  • システム設計
  • 戦略立案

が好きな人が、

  • ファイル整理
  • 委員会運営
  • 会議調整

を好きとは限りません。むしろ、本来のやりがいある仕事から引き離されることで満足度が大きく低下する。


② やる気が高い人はバーンアウトしにくい

これも誤りである。仕事への情熱は、好きな仕事に対して発揮されるエネルギーであり、雑務への耐久力ではない。研究では、意欲的な社員ほど追加業務によるストレスや不満が大きくなることが確認されている。


なぜ問題なのか

追加業務の偏りは、単なる不公平感だけでなく、本業の成果まで低下させます。つまり、マネジャーは「優秀だから頼む」つもりでも、結果的には

  • 本業の生産性低下
  • 満足度低下
  • 離職リスク上昇

を招いているのである。組織が最も残したい人材ほど傷つけている構図である。


研究で示された解決策

1. 誰に追加業務を割り当てたか記録する

ほとんどのマネジャーは、自分が偏った割り当てをしている自覚がない。そこで、

  • スプレッドシート
  • タスクリスト
  • メモ

などで、「誰に何回追加業務を依頼したか」を見える化する。可視化だけでも偏りは大きく減少する。


2. まとめて割り当てる

追加業務が発生するたびに決めると、つい「頼みやすい人」に集中する。しかし、

  • 月単位
  • 四半期単位

でまとめて考えると、自然と公平性が高まることが分かった。


3. 「優秀な人ほど潰れない」という認識を捨てる

研究では、「内発的動機はバーンアウトを防がない」という事実をマネジャーに伝えるだけで、業務配分の公平性が改善した。


経営・組織運営への示唆

この論文は、組織でよく見られる「信頼できる人ほど損をする現象」を科学的に証明している。実際の職場では、

  • 優秀だから頼む
  • 責任感が強いから頼む
  • 文句を言わないから頼む

という判断が繰り返される。その結果、組織を支える中核人材が疲弊し、平均的な社員は負荷が軽いままになる。短期的には効率的に見えても、長期的には組織能力を毀損する。

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