HBR Article:戦略「業務改善を推進する4つの能力」

 同じリーンやシックス・シグマを導入していても、企業によって成果に大きな差が生じる理由は、単なる改善手法の有無ではなく、「能力をどう積み上げているか」にある。本稿では、銀行・ヘルスケア業界の実証研究をもとに、持続的な競争優位性を生み出すためには、「発見」「改善」「整合」「変革」という4つの能力を順番に累積的に構築する必要があることを明らかにしている。オペレーショナル・エクセレンスとは、個別施策ではなく、環境変化に適応し続ける“進化能力”そのものである。


なぜ同じ改善手法でも成果に差が出るのか

リーン、シックス・シグマなどの業務改善手法は、多くの企業で導入されている。しかし、同じように投資していても、市場シェアや顧客満足度を高める企業がある一方、競争力を失う企業も存在する。研究では、その差は「改善手法」ではなく、組織がどのように能力を積み重ねているかにあると指摘する。


4つの累積能力

1. 発見能力(Discover)

内部業務や市場環境からシグナルを感知し、課題や変化を早期に発見する能力。

高業績企業は、内部KPIだけでなく、顧客の声、競合動向、技術変化などを継続的に観察し、問題の兆候を先回りして捉えていた。アマゾンのように、顧客行動データから配送課題を特定し、迅速に改善へつなげる事例も紹介されている。

ポイントは、「現場の違和感」を組織的に拾い上げる仕組みを持つことである。


2. 改善能力(Improve)

発見した課題を、継続的な改善と学習サイクルにつなげる能力。

トップ企業では、改善活動が単発では終わらず、組織的な学習として蓄積されていた。トヨタのカイゼン活動のように、小さな実験と振り返りを繰り返し、失敗から迅速に学ぶ文化が定着している。

重要なのは、改善を「特別プロジェクト」にせず、日常業務の一部として習慣化することである。


3. 整合能力(Align)

改善活動を、企業全体の戦略や長期目標と結びつける能力。

高業績企業は、個別最適ではなく、全社戦略に沿って改善活動を統合していた。例えば、ある銀行は、バランススコアカードを用いて、現場の改善と経営目標をリアルタイムで連動させていた。

ネットフリックスも、AIやデータ活用を単なる効率化ではなく、「顧客維持」という戦略目的に直結させている。

改善の価値は、「何を改善したか」ではなく、「戦略にどう貢献したか」で決まる。


4. 変革能力(Transform)

市場変化に応じて、自社の事業モデルやオペレーションそのものを再構築する能力。

変革能力の高い企業は、既存事業の延長線上ではなく、新たな市場機会に合わせて組織を再定義していた。平安保険は、保険会社から、医療・フィンテック・スマートシティへと事業領域を拡張し、新たな成長基盤を築いている。

これは単なるDXではなく、「自社は何者か」を変えるレベルの変革である。


能力は“順番”が重要

研究で特に重要視されたのは、4つの能力を「順番通り」に積み上げることだった。

  • 発見能力のみ:問題認識は高いが成果は限定的
  • 発見+改善:業界平均レベルへ到達
  • 発見+改善+整合:競争優位を確立
  • 4能力すべて:競争優位を持続

つまり、改善だけでは不十分であり、戦略との整合、さらに変革まで到達して初めて、持続的な優位性が生まれるのである。


本稿の示唆

現代のオペレーショナル・エクセレンスは、単なる効率改善ではない。重要なのは、「変化に適応し続ける能力」を組織に埋め込むことである。

多くの企業は依然として、個別施策や短期改善の繰り返しに留まっている。しかし、真に成果を出す企業は、改善を“能力構築のシステム”として設計している。

リーダーに求められるのは、単発の成功事例を増やすことではなく、組織が継続的に学習・適応・進化できる基盤を構築することである。

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